ディオンとピノで媚薬入りチョコレート(笑)/ゆめのあとで/休日出勤

 

 

 実は前回の記事、全文を書き終わったあとにぜんぶ消えてしまいまして、まあだからというわけでもないのですが、その日のブログはその日のうちに終わらせようという意識がなんとなしに強いので、今日は前置きなしにとっとと振り返りに入ろうかと思います。なんといっても今回取り上げる1作目、話したいことが多いのでね。

 

 

セパイア商会の配達員が媚薬入りチョコレート(笑)でプレジデンテに愛される

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 アナドス始めました記念……のような二次創作です。アナドスというのは「龍脈のアナザーエイドスR」という基本無料成人向けホモエロゲーで、推しの絵描きが担当した鳥キャラが実装されたのがきっかけでプレイし始めました。

 

 配信当初、このゲームはあまりにも動作が不安定で、かつ理不尽なレベルの難易度と育成素材の不足で悪評にまみれ、界隈では長く「名前を出してはいけないあのゲーム」のような扱いを受けていました。加えて、エッチシーンががっつり用意されているのでiOSでの配信はまず不可能、つまりプレイするにはAndroid端末、もしくはAndroidの環境エミュレータが必要でした。

 競合相手には、エッチなしではありながら今なお人気が衰えることを知らない「東京放課後サモナー」や「ライブ・ア・ヒーロー!」があり、後発にはブラウザエロゲーの「クレイブサーガ 神絆の導師」も登場しました。ガチャゲーにとってリリース直後の印象というのは非常に重いものですし、それでなくともAndroidユーザーではない人はPCでエミュを導入せねばならないですし、決して低いハードルではありません。結果、放サモ・ラブヒロのようなレベルの覇権タイトルには至らず、ならばエロで戦おうとしても、今度はブラゲという手軽なプラットフォームのクレサガが立ちはだかり、リリースから一年あまりの当時、アナドスはそれなりに厳しい状況にあったといえます。

 また、アナドスはエロゲでありながら硬派なハイファンタジーの側面もあり、リリース当時配信されていたメインストーリーは全編エロなしでの大量テキストというもの。ゲーム自体の難易度と育成素材の渋さ、あらゆる動作がきわめて重く、まともにプレイできた人がほぼいないという状況に加えて、文章によるエロ抜きの本格的なストーリー展開。あまつ、泣きっ面に蜂のように某ウィルスまでが牙を剥き、運営・開発は大きく遅延しました。例を挙げると、その年の夏イベントの更新は11月の終わりまで続いたといいます。「ていうかもう冬じゃね!? キャンペーン」という、運営スケジュールの遅れをもろに自虐する施策も打っていたそうな。

 私がプレイしはじめたのは、配信1周年を終えた後のバレンタインイベント期間でしたが、これも3月いっぱいまで続いていたような覚えがありますし、今年の夏は去年のイベントの復刻開催が主で、新規の夏イベらしきものは9月からの開始……と、施策遅れをまだまだ取り戻せていない印象が否めませんでした。

 

 

私の推し。の、ランクアップイラスト。あまりにもかわいい。

 

 

 とはいえです。

 きっかけこそ推しのキャラではありましたが、アナドスはエロを差し引いたとしてもテキストが非常に良質で、シリアスな展開が売りのメインストーリーと、プレイヤーから「頭アナドス」と高評価なイベントストーリー、ふたつの軸での文章表現を見せてくれるのでした。

 

 当時の私はもちろん、ガチャで推しを引かねばならなかったのでストーリーは全スキップして石堀りに終始。バレンタインイベントも「推しが出てくるなら見ておくか」程度の関心でした。しかし読んでみるとこれがなかなか面白い。

 件のバレンタインイベントは、戦争ビジネスで稼いでいた武器商人ギルドが、戦争の終結によって立ち行かなくなり、新たなビジネスデザインとして、「愛の日の伝統を取り戻す」という建前のもと、エッチなお薬を混ぜたチョコレートを流通させて新需要を一手に握ろうとする、起死回生の一手を描くストーリーでした。作れば作っただけ売れていた武器は時代に取り残され、お菓子など作ったこともない鍛冶職人たちが大真面目にチョコレートの製法・生産ラインを確立し、海賊の私掠船を利用して市場へ流通させてゆく……ところどころでエロゲらしいぶっとんだ展開を交えつつも、仕事物として案外まともで、面白かったのです。

 

 アナドスは、過去に開催されたイベントをいつでもプレイ可能で、一部を除いてイベント報酬は得られないながら、クリア報酬の石を掘ることはできました。相変わらず推しを引くまではスキップを続けましたが、イベント戦闘用の専用BGMが毎回別個に用意され、いずれも非常に良質でサンドラが欲しくなるような名曲が揃い、そのうえキャラを引いていなくても見られるエッチシーンも量・質ともにとっても豪華です。

 私は以前、放サモに挑戦したことがあります。その時も、今回と同じ推し絵描きが担当した鳥キャラが実装されたのが理由でした。界隈の心を掴んで離さないゲーム、私も触ってみるくらいはしてみようと思ったのです。しかしあまりにも古臭いUIや、面白さを感じにくいゲーム性、正直まったく好みでない絵柄のメインキャラなど、チュートリアルを進めただけでもうお腹いっぱい、一日で引退を決意したものでした。

 そのことを思えば、アナドスのゲーム体験は十分に私を魅了してくれました。アナドスもあくまで中小企業開発、UIや戦闘グラフィックなどにチープさはあるものの、人気イラストレーターがひしめくイラストは文句なしに絢爛豪華。読み応えのあるテキストに、いい意味でエロゲらしい悪ふざけまじりのストーリーとエッチシーン。その時点で4つのソシャゲをはしごしていた私ですが、アナドスは迷う余地もなくメインタイトルに昇格確定したのでした。

 

 とはいえ。

 プレイ熱と推しへの愛が冷めないうちに、私も一作書かずにいられなかった次第ですが、アナドスは二次創作が今ひとつ盛り上がっていません

 理由としては上記したとおり、そもそものプレイ人口が少ないこともあるでしょうが、おそらく最たる理由はゲーム内でエッチシーンがガンガン流れるからです。公式が最王手すぎる!

 思うに、放サモ・ラブヒロの二次創作が強い需要を持っているのは、本編にエロがないためです。大好きなキャラのエッチが見たい! その熱意は多くの二次創作を生みます。その点、アナドスはエッチシーンが大盤振る舞いです。したがってファンが二次創作する必要は少ない。アナドスはゲーム内で需要が完結していました

 また、メインストーリーが本格的に展開している以上、世界設定はかなり作り込まれており、ファンが創作する難易度が非常に高いということも考えられるでしょう。複雑な政治事情を描写するのはそれ単体ですら難しく、各国のパワーバランス、本編でも詳細には明かされていない竜王ならびに悪魔たちの設定、悪魔たちと同時に出現する迷宮とレリックなどなど……理解しないまま描くにはほとんどすべてのキャラ・地域に明らかでない背景がありすぎます。アナドスの物語は竜王による支配が終わったところから始まるのですが、戦争時代にどの国でどんなことが起こったのか、非常に高水準の原作エミュレートが必須になるのです。

 

 今でこそ、私はメイン・イベントともにストーリーを読破しましたが、それでもアナドスでの本格的な二次創作は「ちょっと無理かな……」という印象です。ストーリーをスキップしていたプレイ当初などもっての外です。ちょっと触った程度で準備十分に至れるほど、アナドスの設定は浅くない。

 もちろんアナドスはエロゲであり、エッチをライトに楽しむだけでも全然大丈夫。しかしキャラを誰か一人書いてみようと思うと、少なくともそのキャラの経緯を知る必要は絶対にある訳で……その経緯には必ず竜王を中心とした戦争があるはずで、であれば当時の各国の情勢をきちんと理解しなければ、想像で書くしかないのです。

 結局はわからないところに触れないようにしながら、表象的な部分のみを描写することになる……

 本作は、まんまそういう内容になりました。というか、ろくに原作理解をしないまま書いていましたしね。でもこの時ばかりは「そんなことを気にしていたら書けるものも書けないじゃんね!」という気持ちが勝ちました。ディオンとピノという組み合わせが、あまりにもティンときてしまったのでね……

 

 実は、アナドスで書きたいと思っているネタがひとつあります。しかしストーリーにがっつりと触れた今、その練り込まれた原作設定をシカトして雰囲気で小説を書くことに対する気が進まないような思いがあり……でもそんなことを言ったらサービス終了までろくにアナドス書けないんだよなあ……

 幸運にも、現在実施されているクリスマスイベント(これも1月いっぱいまでやりそう)は私が書きたいと思っているキャラの所属陣営が主導しています。なんらかの掘り下げがあればいいですが、思わぬ設定が出てきたりしたらまた書く難易度が上がりそうで……そういうことを考えると、本作はむしろ、「何も知らないから二次創作できた」という、稀な体験でした。ストーリーも好きになった今だからこそ、次はちゃんと書いてあげたいんだけどなあ。どうかなあ。

 

 ちなみに、アナドスは現在、エミュを必要としないPC版が配信されています。クッソ重いNOXやブルスタに頼らず、シャキシャキぬるぬる動作するアナドスは本当に快適です。ありがとう、ありがとう……

 

 

 

 

みどりのもりで生まれて初めて夢を見たメイがガブを守りたいと思った話

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あらしのよるに」の短編二次創作。

 これも書くのがとても難しかった。私はあらよる原作および映画があまりにも好きなので、二次創作するのもためらわれたのです。

 しかも本作、ほとんどが私のアイデアではありません。昔見た個人サイトで読んだ二次創作小説の記憶を元に勝手にリライトしたのです。

 

 私が「個人サイト巡り」をするようになったのは、あらしのよるにがきっかけでした。昔は各コンテンツごとに「ランキングサイト」なるものが存在しまして、たとえば「あらよるランキング」ではあらしのよるにを扱ったイラスト・小説サイトがたくさんランキングに登録されていて、あらよる世界に浸りたければ思うぞんぶん浸ることができたのでした。

 若かった頃の私は親の携帯を借りたり、ネットカフェに行ったりして、ランキングをザッピングしてさまざまなあらよる二次創作に触れたものでした。色んな人の色んな作品解釈で、たくさんの作品が生み出されていて、原作の外でガブやメイやギロやバリーなどが動作しているのを見るのは、本当に嬉しくて楽しかった。

 と、インターネット老人のようなことを書いていますが、本作の大元は、そのような「個人サイト」が完全にメインストリームを退いて、「昔はこんなものもあったなあ」と久しくなった頃に見つけたものです。その時はまだ、検索すればなんとか見つけられる程度にはネット上に痕跡も残っていました。その中のひとつに、私が個人サイト巡りをしていた頃にはまったく知らなかったホームページがあり、そこで公開されていた小説がたいへん素晴らしかったのです。現実に存在するオオカミとヤギの生態を作品に取り入れ、かつあらよるらしさもたっぷりと感じられる、シビアながら心躍る小説を書くサイトでした。

 

 私も歳を取り、古いPCを何度か買い替えるうち、ブックマークを失くしたのももちろん、サイト名さえも思い出せなくなってしまい、現状、あのサイトをもう一度見ることはできなくなってしまいました。またあの作者の小説が読みたい。しかしサーバーがサービス終了したか、それとも作者がサイトを閉じてしまったか、あるいは私の検索力が足りていないか……いずれにしても、もう二度と読めなくなってしまったあらよる小説がネット上に確かにあったのです。

 ですので本作は、私がその小説をもう一度読みたいから書いた――というものでした。ある意味、三次創作ということになります。

 

 もう昔のことですので思い出補正もおおいに入っていそうですが、だとしても私の文章では、あのとき読んだ小説の素晴らしさはひとつも再現できませんでした。どうしても思い出せないところもたくさんありましたし、そういうところを自分の解釈で埋めたりすれば、話がどんどん自分のテイストになって、コレジャナイ感が半端ない。

 それでも、自分の手で大好きなガブとメイを動作させる歓びはありました。以前の記事で書いたように、私は大昔に「あらしのよるに」の二次創作をしていて、それをメインコンテンツとしたホームページなども作ったりしましたが、サーバーのサービス終了とともにネット宇宙の塵と消え、めでたく誰の目に触れることもない黒歴史となったのでした。正直、本作を書いていても当時の気持ちは思い出せませんでした。二次創作というものに対する考えも、当時とはあまりにも違いすぎます。

 しかし、思い入れだけは尋常ではありません。私、当時はあらしのよるにが好きすぎて生きているのがつらいレベルだったので。当時そのままの熱量とはいわずとも、やっぱり好きなものは好きでした。本作を書くにあたって映画を見返してみたりもして、改めて「あらよるは、いいぞ」という気持ちになったりもしました。

 

 私が現在も小説を趣味としているのは、中学生の頃のあらよる二次創作の延長です。でも本作に対しては、あまりに長くジャンルを離れすぎましたし、そもそも他人様の小説が元ネタだし、原点回帰のような気持ちはまったくなかったのですが、なんにせよ延長にある今の私が「あらしのよるに」に向き合うのは、本当に難しかった。心温まる原作に対して、私の何もかもがマッチしていない。あらよるっぽくない。ガブとメイってこんなんじゃない気がする……

 まあ、あらよるユニバースは原作と映画以外にもアニメ・舞台・小説・漫画・ドラマCD・ゲームなど多種多様で、ガブとメイもそれぞれで少しずつ、あるいは大きく違っていたりしますので、それら数ある公式要素のいいとこ取りした設定キメラのような本作は、「こんなガブメイが一個くらいあってもいいかな……」という謙虚ポジティブで公開しました。

 

 私が活動拠点としているpixivが世に登場した当時で、「あらしのよるに」はすでにじゅうぶん過去の作品でした。それでも「あらしのよるに」をタグ検索すれば、作者ごとに個性溢れるあらよる二次創作がたくさんヒットします。この人たち、みんなあらよる大好きなんだなあとしみじみ嬉しくなる反面、もうほとんど作品が増えなくなっていることが目に見えていたりもして。

 そんな過去の作品の二次創作なんて、令和のこの時代に公開したとて、それほど見られるとも思えません。

 しかし、私の「またあの小説を読みたい」という気持ちは長年の心残りでした。「漏れなつ。」を書いた時もそうでしたが、本作を書いた時、呪縛から解放されたような気持ちがして、やけにすっきりしたものです。

 そんなような次第で、あらよる小説としてはたいして優れているとも思えない本作ですが、原作・映画以外の「あらしのよるに」にも素晴らしいところがたくさんあって、いえば全作品のルートを通ってきたような架空のガブとメイという新生物を生み出すのは、けっこう楽しかったです。DS版なんて、外伝にしておくのがもったいないエピソードが満載なんだよなあ……

 

 しかしまあ、書いてみると改めて強く思うのですが、あらよるもまた公式が最大手すぎるので、あまりにも二次創作の余地を思いつけないんですよね。アニメ版はかなり不評ですが、あれはあれで、原作の尺では描けなかったエピソードとして違和感のないストーリーがたくさんあって、あらよる古参としては年数が過ぎたからこそ「今ならこんなあらよるも許されるよね」という意味で見られる、ご褒美の一種のように感じています。自分でそういうものを二次創作しようと思っても、もうだいたいのことは公式がやってくれてるから、わざわざ自分が書かなくてもいいかなという気になります。

 そういう意味で、今でも大好きな作品ですが、本作を書き終えてみて、あらよるで二次創作はもう書かないかなあという感想が出てくるのでした。よほどいいネタが思い浮かべば書くかもしれないですが、今まで生きてきて「これをあらよるで書きたい!」と思ったことなど中学生以来一度もなかった訳ですので、ほぼほぼないかなあ。そもそも私自体が原作を穢したくないとも感じていますから……(私如きが偉大な原作の名に泥などつけられるはずもないのはまた別問題として)

 

 

 

 

休日出勤

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 リザードン総攻め官能小説アンソロジーに寄稿したもの。私はリザードン×ウーラオスカップリングで一本書きました。通販もされていますので、ご興味がありましたらぜひ。

 この同人誌自体は9月17日のけもケットで頒布となりましたが、執筆自体は6月ごろには終わっていたはずなので、このタイミングに振り返ることにします。

 

 これまで再三言ってきたことですが、私はポケモンではルカリオという最大の推しがいます。その他にもクリムガンジュナイパーウェーニバルなど色んな好きなポケモンがいますが、リザードンに関しては好きでもなければ嫌いでもないのです。

 リザードン推しの作者が集まっている企画に、私なんかが参加していていいのかという気持ちがずっとありました。しかし主催者的には「クララの文章でリザードンを読みたいから誘った(意訳)」ということだったそうなので、リザードンだからどうこうするというよりは、普段通りの私でリザードンを書いてみようと思い、挑戦させていただきました。そんなふうにスカウトされて、決して悪い気はしないのです。

 

 まず、リザードンという素材について。

 どちらかといえば主人公気質なイメージが強く、二次創作においてもそれなりに熱意を持ったキャラクターで描かれていることが多いです。であれば、よく見るようなリザードンではなく、いかにも私が書きそうなリザードンにする必要がありました。なにせ件のアンソロジーでは全員がリザードンを書くのですから、似たようなものを書くのはとうぜん避けたかったのです。

 とりあえず、当時のリザードンをおさらいするところから始まりました。第7世代ではX・Yの2種類のメガシンカを与えられ、剣盾でも専用のキョダイマックスが存在しました。どちらもそれなりに強かったものの、そういう「強いリザードン」はみんなどこかしらで見ているはず。対戦環境を軸にするのはやめておこう。

 ユナイトはどうか。ポケモンユナイトにおけるリザードンは、かなりの晩成キャラですが試合をいっきにひっくり返すポテンシャルは持っているキャラです。とはいえ、リザードンの性能というのは「刺さるか・刺さらないか」という相手依存のもので、リザードン単体がどうこうというのは今ひとつしっくりこないのです。どんな構成にも入るようなキャラでもないし……

 ただ、エオス島という舞台はよさそうだと思いました。以前にも書きましたが、ユナイトは原作よりも「よそのポケモン」との絡みが書きやすいのです。また、実装キャラのうちウーラオスというそれなりにヘキなポケモンもまだ書いたことがありませんでした。リザードン自体をどう扱うかも決まっていないのに、カップリング相手など思いつける気がまったくしませんでした。その点、ユナイトの舞台であればリザードン×ウーラオスという組み合わせも説明がつきやすくて、正直助かります。

 

 ウーラオスという相方が決まれば、その後はトントン拍子でした。

 原作でもユナイトでも、ウーラオスは一級品の性能を持つポケモンです。図鑑説明文を見ても、バトルに熱意を燃やす熱血なポケモンで描くのがわかりやすいでしょう。

 ならばリザードンはその逆で、あまりバトルしたくない性格にすれば、関係にアクセントが出ます。どちらもバトルに積極的な性格だと、今までに書いたポケモン小説と似たような内容にしかならなそうだというのもあります。あとは、リザードンがバトルに消極的な理由を考えるだけでいいです。

 という訳で、元軍属の、諸々の経緯があって今はエオス島で働いているリザードン、ということになりました。イッシュ地方では昔ポケモンを用いた戦争があったこと、ガラル地方では企業や大学でポケモンが働いていること、直近で出たリザードンのホロウェアが「ミュウツーの逆襲」で配達員をしていたカイリューを思わせたこと、などなど、いんな要素を超融合して、本作の主人公のできあがりです。

 

 口調はがさつっぽいけれど、心に傷を負っていてあまりメンタルが強くはなく、直情径行なウーラオスをからかいながらも、内心では救われている――またぞろこういうややこしいのが主人公になりましたが、そんなリザードンから見て、ウーラオスのどんなところが魅力なのかを描いてゆくうちに、このキャラのことがどんどん好きになりました。ボロボロに傷ついて、誰かの手を借りながら立ち直ってゆく姿というのは、この世でいちばん尊い関係性だと私は思うので、無意識にそんなような話になっていることがありがちです。そこでやはり、ポケモンというのは人間ではなくてモンスターなので、ちょっと独特な思考展開を描写しやすかったりもして、こういうのも人間とポケモンが共存している設定だからこそ書けることだなあと、毎回のように感じます。

 結果として、リザードンにそれほど思いを馳せたことがない割に、個性的なリザードンになったように思います。これが魅力的かといわれれば、ちょっと保証しかねるところではありますが、でも私はこのリザードンは大好きになりましたし、私に求められるのって、そんなような文章でしょうしね。求められたとおりの仕事にもなって、概ね満足です。

 

 最後に、製本の段階になって、他の方の原稿を初めて読んだ時、奇跡みたいなネタの被り方をしてしまった話が一本ありまして……あれにはヒヤリとさせられたものです。私が書くものなんて、それほどメジャーな文脈とも思われないんですが、まあシーンの演出としてはありがちとも言えますかね……って、全文を公開していない以上、本を買ってない人にはなんのこっちゃわかりゃしないんですが、振り返りの中にそんなこともあったねってことで。

 

 

 

 

 ということで、本日も3作振り返りました。それぞれがそれぞれの理由で書くのが難しかったものです。この時期の私はちょっと挑戦的に小説を書いていたんでしょうね。

 しかし今年のこの振り返りですが、なんだか示し合わせたみたいに毎回共通のテーマみたいなものがありますね。だいたい出した順番で語っているだけなんですが、偶然で片づけるには興味深いことが起こっています。こういうことがあると、なんだか今後の課題が見えてくるような気になります。

 しかしもう本当に小説なんて書いていられる暇がないので、その課題に取り組むのはいったいいつになるのか……このブログもさっと書いて終わるつもりだったのに、結局日付が変わってるじゃないか……時の流れは異常です。これでおれの今日一日が、終わり? ありえない、ありえない……