13の不確かな断章(25の不確かな断章)/大人の青春を笑うな! 第一話/ぬくめどり

 

 常磐線友部行の電車内からこんにちは、こんばんは、おはようございます。

 実は本日、年末の終夜運転を利用した年末最長大回り乗車をしております。大回り乗車についての詳細はわざわざしませんが、今回はスマホからの編集のため、文字色を変えるなどの文字装飾ができないようです。

 本当なら家にいるうちにPCでブログ更新したかったのですが、この年末は何かと余裕がなく、苦肉の策としてこのような形をとることになりました。しかしやり方はどうあれ、やはりこの振り返りを終わらせずに2024年を迎えることなど有り得ないので、旅の途中ですがこうしてブログを更新しております。最長大回り乗車改札内36時間も拘束されますので、ぶっちゃけ暇だしね……

 

 では、いつもと勝手は違いますがいきましょう。最後の振り返りです。

 

 

 

 

25の不確かな断章(13の不確かな断章)

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=20601318

 

 

 ポケモン小説wikiの短編小説大会に投稿したものが「13の不確かな断章」、それを大幅に加筆修正したのが「25の不確かな断章」です。

 本作はちょっとやらかしてしまったものでして、wikiの大会の規約では「1万字以内の作品」となっていたところ、私は何を勘違いしていたのか「2万字弱」で投稿してしまったのですね。

 規約違反のため、読者投票によるポイントは大幅に減点。というか、一票ももらえなくともやむなしと考えていました。しかし内容を気に入って、減点対象と理解しながらも票を入れていただいたりなんぞして……大会的にはほとんど無効票、他の参加者から無為に票を奪ってしまっただけという、参加者・読者全員に対して非常に申し訳ないことをしてしまいました。

 

 しかもこれ、2万字におさめるために当初のプロットから内容を大幅に削り、なんとか形にした上での規約違反でした。書きたかったことを泣く泣くオミットして、ギリギリのところで体裁は保ったのに、規約違反とは。あまりにもやりきれない……

 で、後に完全版として当初のプロットどおりのものを執筆、公開したという訳です。

 

 大会のお題が「えん」だったので、そのままガオガエンを扱う話を書きました。本作の執筆開始と同時期ごろに新アニポケ、通称「リコロイ」も視聴しはじめたところ、セキエイ学園なる全寮制学校が登場したので、これ幸いと本作の舞台に採用。あとは主人公にガオガエンへの愛情とセキエイ学園入学の強い動機を与えればトントン拍子。

 反省としては、セキエイ学園での授業風景をもう少し描写すべきかと思いました。それがあるだけで主人公とニャビーニャヒート)の絆もより説得力が増します。ただこれは、本家のリコロイも良くないと思うのです。あの学園で具体的に何をしているのか、よくわからないままリコがパルデアに行くことになって、ディテールがほとんど明かされませんでしたから。

 それならそれで、こちらで勝手に想像して書けばよかったのですが、大会の締切もあるし、そもそもプロットの段階から2万字に収めるために余計な話をなるべく書かないつもりでもありました。でもまあ、最たる理由が「面倒くさかった」なので、私がどうこうではなく作品にとってよいことを、手間を嫌って書かなかったのは、流石にだめですね。昔は、しんどくても楽しくなくても、作品に必要な要素なら頑張って書いていたと思うのですが……気力の衰えじみたものを感じる……

 

 ほのぼのと学園生活を書くだけでも話がまとまりそうなところ、そういうのは書いてても私が楽しくないので、喪失したものについてを描いてゆくややシリアスな話に。文章量の割に地味な話ですが、はっきりした意味とかを持たないあやふやな感じは、我ながらなかなか好きです。

 あとは、「ニャオハ立つな」というミームについてもかなりいろいろ書いたのですが……大回り乗車のバタバタの間に消えてしまったので、もう一度書く気が起こらず、カットすることにします。この短期間に二度も書きかけが消えてしまって、完全に自分の不注意なんですが、ガン萎えしてます。下書き保存、大事ですね……

 

 

 

 

大人の青春を笑うな! 第一話

https://twitter.com/kemobunren/status/1700302849237024863?s=46&t=0dUeCfX7fJdzDvR6mTBguw

 

 

 獣文連第3集で書いたもの。この本、色々と大変だったせいでサンプルさえ公開しておらず、購入した人でないとここからの話がまったく意味不明になるかと思いますが、このブログに来る人のうち、これを読んだ人がどれほどいるでしょうかね。

 でも振り返りは振り返り、何もブログを見ている人のためにやる訳でもなし、気にせずやっていきましょう。

 

 第2集で書いた「Killing moon」は、敗戦処理をする戦記小説という血生臭く重苦しい話だったので、次はライトなエンタメ小説にしたいなと思っていました。書いてみると1話のきりのいいところまででもけっこうなページになり、長期連載の予感がします。

 内容は、中年ゲイが歳下のイケメンに言い寄られてジタバタするというもの。中年の恋愛模様は昔ウルファルを書いた時にやってみたことがありますが、10代くらいのピュアな恋愛とは違い、色々な慣れや諦めがある分、大人はまた違った切り口で描けます。

 本作には仕事物の側面もあったりします。主人公の仕事がテレビドラマのプロデューサーという、まったく知らない業界の話なので、これであってるのかヒヤヒヤ……

 業界といえば、「推しの子」の原作を最新話まで一気読みしてしまったのが本作の執筆直後だったのですが、私に「推しの子」を勧めてくれた友人は、本作を見て「露骨に影響受けたなと思った」というようなことを言っていました。いや確かにめちゃくちゃ似てるシーンがあってですね、「推しの子」を読んでいてギョッとなったものでした。これ、パクリだと思われる……!! それくらい似てたんです。かたやラブコメで、かたやサイコサスペンスです。なぜ似るのか。そんな奇跡はいらない。

 

 本作は連載スタートしたばかりなので、あまり多くは語れない、というか何かを語るような段階ですらないのですが、いつも書いているようなものとは、キャラも作風も違うので新鮮な気持ちでした。楽しい小説になると思います。久しぶりの長編で、それほど急いで書くこともないので、私自身も楽しんで書けると思います。

 ただ当然ですが、この連載が終わるまで獣文連では他のものを書けないのです。私も読者も、飽きずにいられるだろうか……

 あとこれ、今年の年明けに虎と兎で干支的なカップルを書こうと思って結局書けなかったネタを、虎を竜に変えてそのまま使ってみたんですが、よく考えたら来年中に連載が終わらなかったら結局干支感は薄れちゃって意味ないなーと……いやまず年内には終わらないですがね、イベントの開催間隔的に。

 次は、順当にいけば5月の関西けもケットですかね。乞うご期待!

 

 

 

ぬくめどり

https://pokestory.pgw.jp/main/?%e3%81%ac%e3%81%8f%e3%82%81%e3%81%a9%e3%82%8a

 

 

 ポケモン小説wikiの帰ってきた変態選手権に投稿したもの。つい先日、読者投票も終わったばかりです。これが年内最後の執筆になりました。

 

「ぬくめどり」とは、鷹が捕まえた小鳥で足を温め、朝になって解放すると、小鳥が飛んでいったあたりでは狩りをしなくなる――というモチーフの日本画のことです。野生の鷹がそのような習性を持っているのか、本当のところは知りませんが、なんともロマンティックですし、鳥フェチの私には直撃な一品といえます。

 そもそも私は、それほど特殊なフェチを持っていません。世間的には、ケモナーでゲイといえばそれだけでじゅうぶん特殊なのは理解していますが、ポケモン小説wikiの参加者の中に紛れてしまえばたいしたことはありません。変態性で小説を書けといわれたら、まあ勝ち目はないだろうとは思いながらも、はなから参加しないというのもつまらないので、私のフェチである鳥ホモをポケモンでやってみることにしました。幸いにして、変態選手権の投稿作品はエッチメインでなくともよい決まりです。

 

 私のフェチを全面に押し立てて書くというなら、鳥キャラの他にあるのは言葉遊びです。今回は特に顕著だったかもしれません。読者投票では、「書いてあることの意味はわからない」というような感想もありました。でも文章というのは、そんなふうにも書けるのです。ミステリに対するアンチミステリのように、最初から意味が成立しないことを前提にした文章。それってとっても面白いと思うんです。せっかくなので、好きなように書けるだけのことを書いてみましたが、先ほどの感想のように、意味不明だとしてもそれでよいです。日本語として読めはするものの、意味があるのかも疑わしい文章。

 こういうのは通常の現国などで習う読解力で読み解けるものではないです。そして感じたいように感じていただければよいのです。ついでに、その若干の意味不明さになんだかよくわからないトキメキのような楽しさを感じてもらえたら私は最高にハッピーです。本作は入賞こそならなかったものの、雰囲気小説として楽しんでくださった方もいたようでした。

 

 ただ、今回はテーマがそれほど変態的な作品作りにふさわしくなかったなあと思います。ぬくめどりをテーマにするとどうしてもロマンティックになったし、なんとか話をまとめて書き終えるだけで精一杯、入賞争いに食い込めるほどのものとはなりませんでした。そもそも私、変態選手権なのに変態を書こうとしてなかったかもしれません。双頭ディルドを使った鳥ホモレズセックスなんてネタも、ここで半端に消費すべきではなかったようにも思います。

 でも、エロさが得点に直結しやすい大会だったなら、半端に雰囲気を描くより覚悟を決めてエロで特化した方がよかったです。なんだか、大会に参加するためだけに無理やり書いた感じがする。「ぬくめどり」で何か書きたいという気持ちは以前からずっとあって、それで何かエッチなものを書けるような気がしたんですが、投稿開始日が迫っても一向にネタは固まらず、結局はエッチとは程遠い趣旨のものに……ですので結局、変態なものを書こうとはあまり考えておらず、とにかく完成させることが目標になっていました。結果的には、変態さにはふさわしくないテーマが足を引っ張ったことになるでしょうか。

 当初から変態選手権は私の戦場ではないような気はしていたものの、だからといって挑戦しない理由はどこにもないです。そして、参加するならするで、自分がちゃんと「エッチだ……」と感じたものを書きたいです。私とてポケモンでエッチなものを書きたくない訳ではない……というか私にはむしろ、クリムガンのエロで3桁ブクマを達成したというささやかな誇りもあります。推しのエッチさを強調する演出で、それがどこまで通用するか、書いてみたい。

 それを大会前に考えられなかったのが本作の反省です。

 

 

 

 

 以上、2023年に私が執筆した全作品を振り返りました。

 体感としてはやはりちっとも書いてない年だったなあ、という感じなんですが、実際にはほどほどに書いていますね。そして、この振り返りをやる前は書くというモチベーションを失っていた訳ですが、今では「なんとか書きたい」というところまでは復活しています。なんだってそうですが、気持ちが向かない時はあります。そして、そっぽを向いた気持ちは自分で向きを修正しなければ一生前には向きません。

 

 簡単に自分の書いたものを振り返るだけでも、学びとれそうなこと、浮かび上がる課題はなんとなくでも見えてきます。最初は自分語りがしたくてやり始めたことですが、けっこうまともに有意義に感じます。

 あとは、振り返っただけで何かをした気になって、反省を活かさずに終わり……ということにならなければOKなんですが、それは来年の私がなんとかするでしょう。だって私、今は橋本から茅ヶ崎を目指して入谷を出発したところなんです。今は小説とか、ちょっと書けない……そして座席の暖房が熱くてお尻がつらい……

 でもこれで来年を迎えるためにやるべきことは概ね終わりました。グラブルからは300連目にリミゼタが出たし、コードギアスのゲームではクリスマスのスザクとアーニャを我慢して明日の正月ルルーシュ・スザクに備え、アナドスでは目当ての限定バーリッツ・エドガーを確保しました。残るは、一刻も早く成田に着いて待合室を確保することだけです。Xで年越しの一言くらいは挨拶したい……

 

 では皆さん、今年も1年、ありがとうございました。良いお年をお迎えください。

 

 

ディオンとピノで媚薬入りチョコレート(笑)/ゆめのあとで/休日出勤

 

 

 実は前回の記事、全文を書き終わったあとにぜんぶ消えてしまいまして、まあだからというわけでもないのですが、その日のブログはその日のうちに終わらせようという意識がなんとなしに強いので、今日は前置きなしにとっとと振り返りに入ろうかと思います。なんといっても今回取り上げる1作目、話したいことが多いのでね。

 

 

セパイア商会の配達員が媚薬入りチョコレート(笑)でプレジデンテに愛される

www.pixiv.net

 

 アナドス始めました記念……のような二次創作です。アナドスというのは「龍脈のアナザーエイドスR」という基本無料成人向けホモエロゲーで、推しの絵描きが担当した鳥キャラが実装されたのがきっかけでプレイし始めました。

 

 配信当初、このゲームはあまりにも動作が不安定で、かつ理不尽なレベルの難易度と育成素材の不足で悪評にまみれ、界隈では長く「名前を出してはいけないあのゲーム」のような扱いを受けていました。加えて、エッチシーンががっつり用意されているのでiOSでの配信はまず不可能、つまりプレイするにはAndroid端末、もしくはAndroidの環境エミュレータが必要でした。

 競合相手には、エッチなしではありながら今なお人気が衰えることを知らない「東京放課後サモナー」や「ライブ・ア・ヒーロー!」があり、後発にはブラウザエロゲーの「クレイブサーガ 神絆の導師」も登場しました。ガチャゲーにとってリリース直後の印象というのは非常に重いものですし、それでなくともAndroidユーザーではない人はPCでエミュを導入せねばならないですし、決して低いハードルではありません。結果、放サモ・ラブヒロのようなレベルの覇権タイトルには至らず、ならばエロで戦おうとしても、今度はブラゲという手軽なプラットフォームのクレサガが立ちはだかり、リリースから一年あまりの当時、アナドスはそれなりに厳しい状況にあったといえます。

 また、アナドスはエロゲでありながら硬派なハイファンタジーの側面もあり、リリース当時配信されていたメインストーリーは全編エロなしでの大量テキストというもの。ゲーム自体の難易度と育成素材の渋さ、あらゆる動作がきわめて重く、まともにプレイできた人がほぼいないという状況に加えて、文章によるエロ抜きの本格的なストーリー展開。あまつ、泣きっ面に蜂のように某ウィルスまでが牙を剥き、運営・開発は大きく遅延しました。例を挙げると、その年の夏イベントの更新は11月の終わりまで続いたといいます。「ていうかもう冬じゃね!? キャンペーン」という、運営スケジュールの遅れをもろに自虐する施策も打っていたそうな。

 私がプレイしはじめたのは、配信1周年を終えた後のバレンタインイベント期間でしたが、これも3月いっぱいまで続いていたような覚えがありますし、今年の夏は去年のイベントの復刻開催が主で、新規の夏イベらしきものは9月からの開始……と、施策遅れをまだまだ取り戻せていない印象が否めませんでした。

 

 

私の推し。の、ランクアップイラスト。あまりにもかわいい。

 

 

 とはいえです。

 きっかけこそ推しのキャラではありましたが、アナドスはエロを差し引いたとしてもテキストが非常に良質で、シリアスな展開が売りのメインストーリーと、プレイヤーから「頭アナドス」と高評価なイベントストーリー、ふたつの軸での文章表現を見せてくれるのでした。

 

 当時の私はもちろん、ガチャで推しを引かねばならなかったのでストーリーは全スキップして石堀りに終始。バレンタインイベントも「推しが出てくるなら見ておくか」程度の関心でした。しかし読んでみるとこれがなかなか面白い。

 件のバレンタインイベントは、戦争ビジネスで稼いでいた武器商人ギルドが、戦争の終結によって立ち行かなくなり、新たなビジネスデザインとして、「愛の日の伝統を取り戻す」という建前のもと、エッチなお薬を混ぜたチョコレートを流通させて新需要を一手に握ろうとする、起死回生の一手を描くストーリーでした。作れば作っただけ売れていた武器は時代に取り残され、お菓子など作ったこともない鍛冶職人たちが大真面目にチョコレートの製法・生産ラインを確立し、海賊の私掠船を利用して市場へ流通させてゆく……ところどころでエロゲらしいぶっとんだ展開を交えつつも、仕事物として案外まともで、面白かったのです。

 

 アナドスは、過去に開催されたイベントをいつでもプレイ可能で、一部を除いてイベント報酬は得られないながら、クリア報酬の石を掘ることはできました。相変わらず推しを引くまではスキップを続けましたが、イベント戦闘用の専用BGMが毎回別個に用意され、いずれも非常に良質でサンドラが欲しくなるような名曲が揃い、そのうえキャラを引いていなくても見られるエッチシーンも量・質ともにとっても豪華です。

 私は以前、放サモに挑戦したことがあります。その時も、今回と同じ推し絵描きが担当した鳥キャラが実装されたのが理由でした。界隈の心を掴んで離さないゲーム、私も触ってみるくらいはしてみようと思ったのです。しかしあまりにも古臭いUIや、面白さを感じにくいゲーム性、正直まったく好みでない絵柄のメインキャラなど、チュートリアルを進めただけでもうお腹いっぱい、一日で引退を決意したものでした。

 そのことを思えば、アナドスのゲーム体験は十分に私を魅了してくれました。アナドスもあくまで中小企業開発、UIや戦闘グラフィックなどにチープさはあるものの、人気イラストレーターがひしめくイラストは文句なしに絢爛豪華。読み応えのあるテキストに、いい意味でエロゲらしい悪ふざけまじりのストーリーとエッチシーン。その時点で4つのソシャゲをはしごしていた私ですが、アナドスは迷う余地もなくメインタイトルに昇格確定したのでした。

 

 とはいえ。

 プレイ熱と推しへの愛が冷めないうちに、私も一作書かずにいられなかった次第ですが、アナドスは二次創作が今ひとつ盛り上がっていません

 理由としては上記したとおり、そもそものプレイ人口が少ないこともあるでしょうが、おそらく最たる理由はゲーム内でエッチシーンがガンガン流れるからです。公式が最王手すぎる!

 思うに、放サモ・ラブヒロの二次創作が強い需要を持っているのは、本編にエロがないためです。大好きなキャラのエッチが見たい! その熱意は多くの二次創作を生みます。その点、アナドスはエッチシーンが大盤振る舞いです。したがってファンが二次創作する必要は少ない。アナドスはゲーム内で需要が完結していました

 また、メインストーリーが本格的に展開している以上、世界設定はかなり作り込まれており、ファンが創作する難易度が非常に高いということも考えられるでしょう。複雑な政治事情を描写するのはそれ単体ですら難しく、各国のパワーバランス、本編でも詳細には明かされていない竜王ならびに悪魔たちの設定、悪魔たちと同時に出現する迷宮とレリックなどなど……理解しないまま描くにはほとんどすべてのキャラ・地域に明らかでない背景がありすぎます。アナドスの物語は竜王による支配が終わったところから始まるのですが、戦争時代にどの国でどんなことが起こったのか、非常に高水準の原作エミュレートが必須になるのです。

 

 今でこそ、私はメイン・イベントともにストーリーを読破しましたが、それでもアナドスでの本格的な二次創作は「ちょっと無理かな……」という印象です。ストーリーをスキップしていたプレイ当初などもっての外です。ちょっと触った程度で準備十分に至れるほど、アナドスの設定は浅くない。

 もちろんアナドスはエロゲであり、エッチをライトに楽しむだけでも全然大丈夫。しかしキャラを誰か一人書いてみようと思うと、少なくともそのキャラの経緯を知る必要は絶対にある訳で……その経緯には必ず竜王を中心とした戦争があるはずで、であれば当時の各国の情勢をきちんと理解しなければ、想像で書くしかないのです。

 結局はわからないところに触れないようにしながら、表象的な部分のみを描写することになる……

 本作は、まんまそういう内容になりました。というか、ろくに原作理解をしないまま書いていましたしね。でもこの時ばかりは「そんなことを気にしていたら書けるものも書けないじゃんね!」という気持ちが勝ちました。ディオンとピノという組み合わせが、あまりにもティンときてしまったのでね……

 

 実は、アナドスで書きたいと思っているネタがひとつあります。しかしストーリーにがっつりと触れた今、その練り込まれた原作設定をシカトして雰囲気で小説を書くことに対する気が進まないような思いがあり……でもそんなことを言ったらサービス終了までろくにアナドス書けないんだよなあ……

 幸運にも、現在実施されているクリスマスイベント(これも1月いっぱいまでやりそう)は私が書きたいと思っているキャラの所属陣営が主導しています。なんらかの掘り下げがあればいいですが、思わぬ設定が出てきたりしたらまた書く難易度が上がりそうで……そういうことを考えると、本作はむしろ、「何も知らないから二次創作できた」という、稀な体験でした。ストーリーも好きになった今だからこそ、次はちゃんと書いてあげたいんだけどなあ。どうかなあ。

 

 ちなみに、アナドスは現在、エミュを必要としないPC版が配信されています。クッソ重いNOXやブルスタに頼らず、シャキシャキぬるぬる動作するアナドスは本当に快適です。ありがとう、ありがとう……

 

 

 

 

みどりのもりで生まれて初めて夢を見たメイがガブを守りたいと思った話

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あらしのよるに」の短編二次創作。

 これも書くのがとても難しかった。私はあらよる原作および映画があまりにも好きなので、二次創作するのもためらわれたのです。

 しかも本作、ほとんどが私のアイデアではありません。昔見た個人サイトで読んだ二次創作小説の記憶を元に勝手にリライトしたのです。

 

 私が「個人サイト巡り」をするようになったのは、あらしのよるにがきっかけでした。昔は各コンテンツごとに「ランキングサイト」なるものが存在しまして、たとえば「あらよるランキング」ではあらしのよるにを扱ったイラスト・小説サイトがたくさんランキングに登録されていて、あらよる世界に浸りたければ思うぞんぶん浸ることができたのでした。

 若かった頃の私は親の携帯を借りたり、ネットカフェに行ったりして、ランキングをザッピングしてさまざまなあらよる二次創作に触れたものでした。色んな人の色んな作品解釈で、たくさんの作品が生み出されていて、原作の外でガブやメイやギロやバリーなどが動作しているのを見るのは、本当に嬉しくて楽しかった。

 と、インターネット老人のようなことを書いていますが、本作の大元は、そのような「個人サイト」が完全にメインストリームを退いて、「昔はこんなものもあったなあ」と久しくなった頃に見つけたものです。その時はまだ、検索すればなんとか見つけられる程度にはネット上に痕跡も残っていました。その中のひとつに、私が個人サイト巡りをしていた頃にはまったく知らなかったホームページがあり、そこで公開されていた小説がたいへん素晴らしかったのです。現実に存在するオオカミとヤギの生態を作品に取り入れ、かつあらよるらしさもたっぷりと感じられる、シビアながら心躍る小説を書くサイトでした。

 

 私も歳を取り、古いPCを何度か買い替えるうち、ブックマークを失くしたのももちろん、サイト名さえも思い出せなくなってしまい、現状、あのサイトをもう一度見ることはできなくなってしまいました。またあの作者の小説が読みたい。しかしサーバーがサービス終了したか、それとも作者がサイトを閉じてしまったか、あるいは私の検索力が足りていないか……いずれにしても、もう二度と読めなくなってしまったあらよる小説がネット上に確かにあったのです。

 ですので本作は、私がその小説をもう一度読みたいから書いた――というものでした。ある意味、三次創作ということになります。

 

 もう昔のことですので思い出補正もおおいに入っていそうですが、だとしても私の文章では、あのとき読んだ小説の素晴らしさはひとつも再現できませんでした。どうしても思い出せないところもたくさんありましたし、そういうところを自分の解釈で埋めたりすれば、話がどんどん自分のテイストになって、コレジャナイ感が半端ない。

 それでも、自分の手で大好きなガブとメイを動作させる歓びはありました。以前の記事で書いたように、私は大昔に「あらしのよるに」の二次創作をしていて、それをメインコンテンツとしたホームページなども作ったりしましたが、サーバーのサービス終了とともにネット宇宙の塵と消え、めでたく誰の目に触れることもない黒歴史となったのでした。正直、本作を書いていても当時の気持ちは思い出せませんでした。二次創作というものに対する考えも、当時とはあまりにも違いすぎます。

 しかし、思い入れだけは尋常ではありません。私、当時はあらしのよるにが好きすぎて生きているのがつらいレベルだったので。当時そのままの熱量とはいわずとも、やっぱり好きなものは好きでした。本作を書くにあたって映画を見返してみたりもして、改めて「あらよるは、いいぞ」という気持ちになったりもしました。

 

 私が現在も小説を趣味としているのは、中学生の頃のあらよる二次創作の延長です。でも本作に対しては、あまりに長くジャンルを離れすぎましたし、そもそも他人様の小説が元ネタだし、原点回帰のような気持ちはまったくなかったのですが、なんにせよ延長にある今の私が「あらしのよるに」に向き合うのは、本当に難しかった。心温まる原作に対して、私の何もかもがマッチしていない。あらよるっぽくない。ガブとメイってこんなんじゃない気がする……

 まあ、あらよるユニバースは原作と映画以外にもアニメ・舞台・小説・漫画・ドラマCD・ゲームなど多種多様で、ガブとメイもそれぞれで少しずつ、あるいは大きく違っていたりしますので、それら数ある公式要素のいいとこ取りした設定キメラのような本作は、「こんなガブメイが一個くらいあってもいいかな……」という謙虚ポジティブで公開しました。

 

 私が活動拠点としているpixivが世に登場した当時で、「あらしのよるに」はすでにじゅうぶん過去の作品でした。それでも「あらしのよるに」をタグ検索すれば、作者ごとに個性溢れるあらよる二次創作がたくさんヒットします。この人たち、みんなあらよる大好きなんだなあとしみじみ嬉しくなる反面、もうほとんど作品が増えなくなっていることが目に見えていたりもして。

 そんな過去の作品の二次創作なんて、令和のこの時代に公開したとて、それほど見られるとも思えません。

 しかし、私の「またあの小説を読みたい」という気持ちは長年の心残りでした。「漏れなつ。」を書いた時もそうでしたが、本作を書いた時、呪縛から解放されたような気持ちがして、やけにすっきりしたものです。

 そんなような次第で、あらよる小説としてはたいして優れているとも思えない本作ですが、原作・映画以外の「あらしのよるに」にも素晴らしいところがたくさんあって、いえば全作品のルートを通ってきたような架空のガブとメイという新生物を生み出すのは、けっこう楽しかったです。DS版なんて、外伝にしておくのがもったいないエピソードが満載なんだよなあ……

 

 しかしまあ、書いてみると改めて強く思うのですが、あらよるもまた公式が最大手すぎるので、あまりにも二次創作の余地を思いつけないんですよね。アニメ版はかなり不評ですが、あれはあれで、原作の尺では描けなかったエピソードとして違和感のないストーリーがたくさんあって、あらよる古参としては年数が過ぎたからこそ「今ならこんなあらよるも許されるよね」という意味で見られる、ご褒美の一種のように感じています。自分でそういうものを二次創作しようと思っても、もうだいたいのことは公式がやってくれてるから、わざわざ自分が書かなくてもいいかなという気になります。

 そういう意味で、今でも大好きな作品ですが、本作を書き終えてみて、あらよるで二次創作はもう書かないかなあという感想が出てくるのでした。よほどいいネタが思い浮かべば書くかもしれないですが、今まで生きてきて「これをあらよるで書きたい!」と思ったことなど中学生以来一度もなかった訳ですので、ほぼほぼないかなあ。そもそも私自体が原作を穢したくないとも感じていますから……(私如きが偉大な原作の名に泥などつけられるはずもないのはまた別問題として)

 

 

 

 

休日出勤

laquray.booth.pm

 

 リザードン総攻め官能小説アンソロジーに寄稿したもの。私はリザードン×ウーラオスカップリングで一本書きました。通販もされていますので、ご興味がありましたらぜひ。

 この同人誌自体は9月17日のけもケットで頒布となりましたが、執筆自体は6月ごろには終わっていたはずなので、このタイミングに振り返ることにします。

 

 これまで再三言ってきたことですが、私はポケモンではルカリオという最大の推しがいます。その他にもクリムガンジュナイパーウェーニバルなど色んな好きなポケモンがいますが、リザードンに関しては好きでもなければ嫌いでもないのです。

 リザードン推しの作者が集まっている企画に、私なんかが参加していていいのかという気持ちがずっとありました。しかし主催者的には「クララの文章でリザードンを読みたいから誘った(意訳)」ということだったそうなので、リザードンだからどうこうするというよりは、普段通りの私でリザードンを書いてみようと思い、挑戦させていただきました。そんなふうにスカウトされて、決して悪い気はしないのです。

 

 まず、リザードンという素材について。

 どちらかといえば主人公気質なイメージが強く、二次創作においてもそれなりに熱意を持ったキャラクターで描かれていることが多いです。であれば、よく見るようなリザードンではなく、いかにも私が書きそうなリザードンにする必要がありました。なにせ件のアンソロジーでは全員がリザードンを書くのですから、似たようなものを書くのはとうぜん避けたかったのです。

 とりあえず、当時のリザードンをおさらいするところから始まりました。第7世代ではX・Yの2種類のメガシンカを与えられ、剣盾でも専用のキョダイマックスが存在しました。どちらもそれなりに強かったものの、そういう「強いリザードン」はみんなどこかしらで見ているはず。対戦環境を軸にするのはやめておこう。

 ユナイトはどうか。ポケモンユナイトにおけるリザードンは、かなりの晩成キャラですが試合をいっきにひっくり返すポテンシャルは持っているキャラです。とはいえ、リザードンの性能というのは「刺さるか・刺さらないか」という相手依存のもので、リザードン単体がどうこうというのは今ひとつしっくりこないのです。どんな構成にも入るようなキャラでもないし……

 ただ、エオス島という舞台はよさそうだと思いました。以前にも書きましたが、ユナイトは原作よりも「よそのポケモン」との絡みが書きやすいのです。また、実装キャラのうちウーラオスというそれなりにヘキなポケモンもまだ書いたことがありませんでした。リザードン自体をどう扱うかも決まっていないのに、カップリング相手など思いつける気がまったくしませんでした。その点、ユナイトの舞台であればリザードン×ウーラオスという組み合わせも説明がつきやすくて、正直助かります。

 

 ウーラオスという相方が決まれば、その後はトントン拍子でした。

 原作でもユナイトでも、ウーラオスは一級品の性能を持つポケモンです。図鑑説明文を見ても、バトルに熱意を燃やす熱血なポケモンで描くのがわかりやすいでしょう。

 ならばリザードンはその逆で、あまりバトルしたくない性格にすれば、関係にアクセントが出ます。どちらもバトルに積極的な性格だと、今までに書いたポケモン小説と似たような内容にしかならなそうだというのもあります。あとは、リザードンがバトルに消極的な理由を考えるだけでいいです。

 という訳で、元軍属の、諸々の経緯があって今はエオス島で働いているリザードン、ということになりました。イッシュ地方では昔ポケモンを用いた戦争があったこと、ガラル地方では企業や大学でポケモンが働いていること、直近で出たリザードンのホロウェアが「ミュウツーの逆襲」で配達員をしていたカイリューを思わせたこと、などなど、いんな要素を超融合して、本作の主人公のできあがりです。

 

 口調はがさつっぽいけれど、心に傷を負っていてあまりメンタルが強くはなく、直情径行なウーラオスをからかいながらも、内心では救われている――またぞろこういうややこしいのが主人公になりましたが、そんなリザードンから見て、ウーラオスのどんなところが魅力なのかを描いてゆくうちに、このキャラのことがどんどん好きになりました。ボロボロに傷ついて、誰かの手を借りながら立ち直ってゆく姿というのは、この世でいちばん尊い関係性だと私は思うので、無意識にそんなような話になっていることがありがちです。そこでやはり、ポケモンというのは人間ではなくてモンスターなので、ちょっと独特な思考展開を描写しやすかったりもして、こういうのも人間とポケモンが共存している設定だからこそ書けることだなあと、毎回のように感じます。

 結果として、リザードンにそれほど思いを馳せたことがない割に、個性的なリザードンになったように思います。これが魅力的かといわれれば、ちょっと保証しかねるところではありますが、でも私はこのリザードンは大好きになりましたし、私に求められるのって、そんなような文章でしょうしね。求められたとおりの仕事にもなって、概ね満足です。

 

 最後に、製本の段階になって、他の方の原稿を初めて読んだ時、奇跡みたいなネタの被り方をしてしまった話が一本ありまして……あれにはヒヤリとさせられたものです。私が書くものなんて、それほどメジャーな文脈とも思われないんですが、まあシーンの演出としてはありがちとも言えますかね……って、全文を公開していない以上、本を買ってない人にはなんのこっちゃわかりゃしないんですが、振り返りの中にそんなこともあったねってことで。

 

 

 

 

 ということで、本日も3作振り返りました。それぞれがそれぞれの理由で書くのが難しかったものです。この時期の私はちょっと挑戦的に小説を書いていたんでしょうね。

 しかし今年のこの振り返りですが、なんだか示し合わせたみたいに毎回共通のテーマみたいなものがありますね。だいたい出した順番で語っているだけなんですが、偶然で片づけるには興味深いことが起こっています。こういうことがあると、なんだか今後の課題が見えてくるような気になります。

 しかしもう本当に小説なんて書いていられる暇がないので、その課題に取り組むのはいったいいつになるのか……このブログもさっと書いて終わるつもりだったのに、結局日付が変わってるじゃないか……時の流れは異常です。これでおれの今日一日が、終わり? ありえない、ありえない……

 

 

 

 

肩身が狭くないルカリオ/鳥お兄さんコンプレックス/虫歯のオオカミ

 

 

 実は私、こんなことをしている場合ではなかったりします。なんだか考えないといけないことが多い毎日です。でも世間様の年末は、おそらく私など比ではないほど多忙なんでしょうね……

 要するに現実逃避なんですが、こういう状況にある時というのは、より一層趣味が楽しく感じます。現実というのは基本的につらいものなので、そこから逃げて好きなことをしている時は楽しくて当然なのです。

 さておき、私としてはこの振り返りを終えないまま来年を迎えるのはあり得ないのです! そして余所事がどれほど忙しかろうと、最低限この程度のペースは保っておかねば年末までに完遂できそうにありませんから、これもある意味でノルマということで。

 

 では振り返っていきましょう。今日も3作です。

 

 

 

 

ノーマルテラスしんそくエース型ルカリオはパルデア環境で肩身が狭くない

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 またまた続いてしまいました、ルカリオのシリーズです。

 執筆当時はまだパラドックスポケモンの解禁前の環境でした。ルカリオにとってもまずまず悪くない環境で、剣盾の環境がいかに地獄の様相を呈していたかを改めて思い知ります。とはいえ、SV環境もパラドックス・四災の解禁でどうなるかわかったものではありませんでした。なので環境が変わる前に書いておかねばならなかったのが本作です。

 

 前作からの続きを書くにあたって、テーマは「バトルで活躍できるようになったルカリオにどのような変化が起こるか」というものにしました。環境の変化に伴い、ルカリオはエースの働きができるようになったことで自尊心を取り戻した一方、仲間とのエッチの機会はむしろ失いつつあり、そのような中で仲間のウェーニバルに恋をしてしまう――というのが話の内容。

 このような複雑な情緒でクソデカ感情を描くのは大好きです。私、仁王立ちクララ、クソデカ感情がとびきりのフェチ

 

 このシリーズはルカリオの独特な思考展開による言葉遊びがマッチする内容なので、本作も思うぞんぶん楽しめました。ウェーニバルとラブラブになりたい。だけど仲間たちとのエッチを愛おしく思う気持ちは捨てられない。ウェーニバルからの愛を求めるのなら、仲間たちとの絆を手放さなければならない。今まで仲間との交流をエッチに依存していたせいで、今さら世間の常識に迎合して通常の交流なんかやり方もわからない――

 このシリーズの楽しさといえば、そのようなルカリオを取り巻く仲間たちでもありました。マスカーニャ、コライドン、テツノツツミ、いずれも面白いキャラに仕上がったと思います。しかし書いてみると、肝心のウェーニバル自体の出番がそれほど多くありませんでした。ルカリオがウェーニバルに対してビビり散らしているからというのも理由ではありますが、白状すれば他のキャラを書くのが楽しくなってしまった影響です。

 

 前回の記事で取り上げた作品もウェーニバルを書いたものがありましたが、あれはウェーニバル一人称に寄った三人称で書いた都合、ウェーニバルを掘り下げることがやや難しく、結局はウェーニバルというポケモンのポテンシャルをじゅうぶんに活かせたとはいえませんでした。であれば、本作では主人公であるルカリオの片想い相手として、ウェーニバルの魅力を強調すべきだったところ、他の要素を書くことに夢中になって、失念してしまったのです。推しを推せていないなど、自己満足にしても片手落ちの有り様です。

 そして何より、ルカリオがなぜウェーニバルに惹かれたのかという、最も肝心な部分の説得力に欠けてしまったことが大問題です。本作のウェーニバルはルカリオにとってだけでなく、読者にとっても魅力的である必要がありました。絶対に

 そこを怠った結果、話全体としても、なにやら薄ぼんやりした印象になっている気がします。

 

 反省としては、書きたかったことは書けていたものの、作品のテーマ完遂としては半端に終わったというところ。特に、推しの魅力を書くことに注力できなかったのは痛恨のミスです。最終的には、「作者だけが楽しい小説」の典型になってしまったでしょう。

 次にウェーニバルを書く時は、今度の今度こそ、とびっきりかわいいウェーニバルを書くぞ……

 

 そんなところで、次に参ります。

 
 
 
 

バレンタイン、隣の部屋を覗ける発展場で鳥お兄さんコンプレックスが爆発する

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 バレンタイン小説としては、出会いの話と別れの話を書きましたので、次は出会いでも別れでもあるものを書こうと挑戦してみたものです。しかしこれ、あまりにもバレンタインである必要性がなさすぎました

 

 かねてよりヘビクイワシという美しすぎる鳥を書いてみたいと思ってはいました。また、覗き窓のある発展場でのガッカリエピソードも、ネタとしてちょっとおかしくて面白そうだなと思っていました。しかしバレンタイン小説にそれらを超融合した結果、完全に手癖が要素を殺してしまったのです。

 舞台は発展場でありながら、内容の半分以上はヘビクイワシの友人についての過去回想。鳥フェチの主人公は他の種族の獣人とのエッチでは満足できないので、なりゆきでのなあなあなエッチによって、むしろ鳥を求める気持ちが強調されるという――そんなような当初の想定どおりに書くことはできました。相手が鳥ではないからいまいち気分が持ち上がらない。そのことで、会えなくなったヘビクイワシのことを思い出し、さらに鳥フェチをこじらせる。エッチという行為がカジュアル化する発展場で、それも隣の部屋で鳥さんがまさにエッチしているのを覗き見ることができるという、キャラ設定とシチュエーション自体は、それなりに活かせたかもしれません。

 しかしそもそも、バレンタイン物として公開し、また読者がそれを選んで読む以上、おそらくもっとわかりやすくバレンタインっぽいものを求めているはずなのです。

 

 妙にこじらせたシリアス調のものを書くよりも、ベタであろうがなんだろうが、直球ストレートを投げた方が読者のミットに突き刺さるに決まっています。また発展場という舞台も、もっとライトでコケティッシュな話の方が魅力的な話になったでしょう。しかも覗き窓のある発展場なんて舞台は、露出プレイの側面もありますから、風変わりな舞台の要素をもっと強調して話の内容に取り込むべきでした。

 その点、ライフセーバーの鳥を書いた時はよかったです。あれはもう底抜けに夏っぽいです。がんがらがんなども、それなりに正月気分を醸し出しています。季節物を書く時というのは、ああいうものでよいのです。

 

 本作は、プロットを用意せずに小説を書く弊害が思いっきり出たものといえます。プロットを書かずにいきなり本文を執筆するのは、まあライブ感重視といえば聞こえはいいですが、私の場合は行き当たりばったりに書いているだけなんですね。先に上げたライフセーバーもがんがらがんも、時期っぽいものを書こうと思って書いたのがたまたまそれらしいものになっただけで、テーマにふさわしい内容にしようと強く思っていたわけでもありませんでした。

 まずは話の軸を意識し、そこからブレないこと。小説を書く基本です。

 もちろん、好き勝手の書くのも楽しいことは楽しいです。が、反省点に気づけたのであれば、次に活かし、同じ轍は踏まないことです。作品の振り返りをするのなら、こういった反省もできればより有意義です。それによって、また一つ視野が広くなるのです。

 

 

 

 

虫歯のオオカミ、抜歯する。

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 自虐ネタ

 こういうことはあまり明らかにすると興ざめになってしまいかねませんので、深くは語りますまい。とにかく、抜歯というのは診断されただけでもかなりのショックなので、「これが獣人だったりしたらより一層のショックを受けることだろうな」と考えたところから、本作はスタートしました。医者から抜歯を言い渡され、ショックを受けながら怯えるオスケモ……うん、かわいいかもしれない、と。かわいそうなのは、適度であればかわいいのです。

 そこから連想していきました。抜歯後の生活で、吸引する動作を禁止されてしまったら、煙草はもちろん吸えないし、フェラチオだってできないよなあ。

 じゃあ総排泄腔だったらエッチできそうじゃね?

 ということで、肉食系の獣人と鳥さんのカップルで書くことに決まりました。

 主人公は何の種族にしようかな、というのはさほど考えませんでした。ほとんど最初からオオカミで想定していたのです。

 

 ここでクララあるあるなのですが、特に設定上の必要性がない場合、獣人を書く時はオオカミを選びがちなのです。というのも、虎やライオンなどでは屈強なイメージが先行しすぎますし、鳥はどうしても格好よく書きたくなってしまう。トカゲや竜などもちょっと特殊な生き物という感じもしますし、ニュートラルなイメージで書ける種族というのは、なかなかないんですよね。自然、その動物のイメージが強く出てしまう。

 それでいくと、オオカミというのは何とも扱いやすいです。格好いいキャラも、かわいいキャラも、堅物キャラも、ある程度なんでもしっくりくる。それがオオカミ。

 たとえば、去年のクリスマスに書いた農業オオカミなんかも、主人公が虎だったりしたらだいぶ印象が変わりそうですよね。まあ、あれは童話の「赤ずきん」も話のモチーフでしたから端からオオカミ以外で書くことはありえなかったのですが、とにかくそれほど強い個性を持たせない登場人物として、オオカミはちょうどいいのです。

 その便利さがあるので、私は特別オオカミという種族を推している訳でもないですが、その割にはオオカミを書いています。もちろん、嫌いかと言われれば大好きです。オオカミはケモノ界隈のセンターです。王道アイドルなのです。オオカミが嫌いなケモナーなど存在しないでしょう。

 

 話が逸れましたが、抜歯が決まってしょんぼりしているオオカミと、それを慰める恋人のワシというカップルは、かなりテーマに沿ったキャラクターになったと思います。鳥が主導する制限つきのエッチも、ちゃんと抜歯後というシチュエーションを活かせました。本作は「抜歯」というテーマから話が一度も逸れなかったので、内容が一貫しているし、死ぬほどわかりやすいです。書こうとしたものがシンプルだったというのもありますが、抜歯したことで日常に何が起きるのかということを実際に経験したからというのもありそうです。

 

 余談ですが、本作では小説を書くためにはじめてChatGPTを活用しました。
 といっても本文をAIに執筆させたのではなくて、抜歯手術の工程や、使用する器具の用途・名称などを問い合わせたもの。こういうネット検索では見つけにくい情報を得たい時、ChatGPTは非常に便利です。ただ、あくまでAIの返答なので、返ってきた情報が本当に正しいのかどうか確認する作業はありますが。

 一方で、小説のネタ出しというか、要素を肉づけしてゆく作業、シナリオ構成などにはさほど有用でもありませんでした。あれこれと試しながら、しばらくAIと話してみましたが、とりたてて小説に活かせそうなアイデアはもらえませんでした。もちろん、私の話し方がよくなかったということもじゅうぶんありえますが。

 そういう訳で、本作はほぼ100%、自力で執筆しております。

 

 本作は書きたいことが最初からはっきりしていたので、短い割に話もまとまっているかなと思います。この話、自分では特別好きでも嫌いでもないですが、まあミスらしいミスもないんじゃないでしょうか(誤字脱字は別にして)。反省としては、割とうまくいっている方だと思います。もちろん、想定通りのものが書けたからといって、それが面白いかどうかはまた別ですが。

 

 

 

 

 以上が、本日3作品の振り返りでした。

 今回の記事では「テーマ」というものに着目してみました。同じような時期に、テーマを完遂できたものとできていないものがたまたま固まっていたせいです。書き上げた直後はテンションも上がってますし、バイアスみたいなものもあって、すごくよく書けているように感じるのですが、冷静になって改めて見返してみるとまだまだ課題の多いこと……

 

 今回の反省点を忘れないうちに、何か一本、短くてもいいから小説を書ければなあと思いはするのですが、諸々のため今は執筆に関わってはいられません。今日のところは、これで現実に戻るとしましょう。

 現実というのは、つまり現実ということなので、いくら逃避してみた気になったとて、原理的に逃避など不可能なのです。早く平和な気持ちで年末を過ごしたい……

 

 

 

 

待っている/Guardian of Materialism 完全版/鷲高校生の転遷 後編

 

 

 今年もこの時期がやってきてしまいました。

 まだそんなもんかと思うような、もうそんな時期かと思うような、そんな具合でいつの間にか12月です。

 

 結局、2023年は一度もこのブログを使いませんでした。何かを語りたいと思った時に思うまま語れる場所が欲しい、という理由で開設したこのブログですが、場を用意したことでなんだか満足してしまったのかもしれません。

 私はこういうことがままあります。買っただけで満足してろくにプレイしていないゲームのような心境です。

 自分で思っているよりも、語りたいことなど私にはなかったのかもしれません。それはべつに悲しいことでもないです。それよりも、毎日やりたいことがあまりに多すぎて、ブログなんぞ書いてる暇はねえ、というのがしっくりくるところです。

 

 

 では、この一年で自分はなにほどのことができたのかなというところから、また振り返ってみます。

 作品数としては12作。去年の15作からは減っていますが、ひとつの作品を連載形式で複数投稿しているのを1作とカウントしているので、まあ書いている量としてはトントンくらいなのではと思います。

 2023年は、それほど精力的に執筆をしていなかったものの、振り返ってみると平均して月一回程度は何かしら書いていたようですね。けっこう意外です。同人誌などへの企画参加が大きかったでしょうか。

 

 そもそもの話、この一年は書くことへの欲求がそれほどでもありませんでした。

 小説を書くのが趣味といっても、やりたくない時はどうしてもやりたくないものでして、12作中6作が、同人誌や企画への参加作品という、いわば「書かねばならぬ」という事情で書いたものでした。ただ、私も趣味で小説を書くようになってからそれなりに長いので、有り体にいってノルマ的に小説を書くことはそれほど苦ではない訳です。ビジネスライクに、締切までに作品を仕上げるという、それはそれでモチベーションになります。

 ながら、そのような書き方をすることが多かった2023年はどうにも、好きだから書くというモチベーションに関してはほぼ壊滅状態でした。実はそんな状態が今も継続中です。

 書きたい、という衝動が湧いてこない。原因は不明ですが、どうやら私は今、小説なんか書きたくないようなのです。仕事中には書きたいものがあれこれ浮かんでくるんですけどね。

 であれば書かずともよろしい、というのが趣味の気楽さです。以前はこうした状態が長く続くと、何か悪いことをしているような気になって焦りをおぼえたりもしたものですが、この一年は何も書かなかった期間が少々続いたところで、精神は比較的平和です。

 良いのか悪いのか、それでも書く必要があって書くとなれば、それなりに書けます。私は自分に文学的才能があるとはまったく思っていませんが、積み重ねたものは確実にありますので、その経験値によって、それほどひどくはない程度の小説ならいつでも書けるのです。

 思うに、そのようにビジネス的に小説を書いていることによって、「まあ一応は書いてるし……」という中途半端な満足感を得てしまっているのもよくないのでしょうか。もちろん、書くとなったら全力で書くので、手抜き作品をお出しするようなことは誓ってありませんが。

 

 そんな訳で、私はこのところ自分の好きなものをまったく書いていないのでした。モチベーションさえあれば書けそうなネタはいくつもあるんですが……書こうという情熱が燃えてくれなければ二進も三進もいかないのです。

 

 前置きが長くなりましたが、こんな状態にあった私が何を書いてきたのか、一年を振り返ってゆきましょう。

 

 

 

待っている

https://pokestory.pgw.jp/main/?%E5%BE%85%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B

 

 

 

 ポケモン小説wikiにて開催された、第十三回仮面小説大会の参加作品です。

 

 去年の振り返りと同じ出だしになってしまいますが、これは2022年12月に投稿したものです。しかし企画の趣旨として、投票期間中は作者を公開してはいけない規約があったため、去年の振り返りでは本作に触れられませんでした。ですのでまずはこれから振り返ることにします。

 

 原作「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」の発売から一ヶ月後の企画でした。企画としてはSVに関連した作品である必要はなかったのですが、「いま何か書くなら最新作で書きたい」という思いで書いたものです。プレイ直後でホヤホヤの熱を活かすべきと思ったのですね。

 

 であれば、ゲーム序盤から言及され、とてつもない存在感を放ちまくっていたパルデアの大穴、通称エリアゼロに触れない手はありません。ポケモンというゲームであれほど冒険心をくすぐったラストダンジョンは前代未聞でした。とてつもない巨大な穴に中に、壮大な自然と未知のポケモンたち。いかにも物語の舞台に相応しい。

 とはいえ、エリアゼロというとびっきりの素材をいかに調理するか、すぐには思いつきませんでした。

 

 そこで、ロケハンがてらゲーム内でエリアゼロを歩き回り飛び回り、あてもなく探索してネタ出しをしていると、大穴を取り囲む岩山の内側に、ガブリアスがすいーっと空を飛んでいるのを見つけました。その姿が、なんともかわいかったのです。こんな何もないところに、ガブリアスという強力な野生ポケモンが気持ちよさそうに飛んでいる。

 それを見た時、山から大穴を見下ろして暮らしているガブリアスというイメージを得て、「エリアゼロの中と外」と着想しました。エリアゼロに探究心を燃やす外の存在と、穴の外を恐れる中のポケモンたち。SVならではの話を書けそうな予感がバリバリでした。

 

 大穴の内外をテーマにする以上、主人公はエリアゼロを行き来する人間、つまりはゲーム主人公もしくはその手持ちが効果的です。ネモ、ペパー、ボタンという手もあるにはありましたが、彼ら彼女らには属性が付随しすぎていて、今回のテーマで使うべきとも思えませんでした。こういうキャラは、キャラを主軸にした創作で描くべきです。よって本編主人公で想定。

 そしてせっかくなら、内と外の境界に棲んでいるガブリアスとの交流を書きたい。

 となれば、意思疎通ができないのは書く上での不自由が大きいため、ポケモン視点で書くことは決定。原作主人公の手持ちから選ぶなら御三家がもっともわかりやすい。マスカーニャ、ウェーニバル、ラウドボーンの中から主役を選択した結果、今作にマッチしたのはウェーニバルでした。

 マスカーニャトリックスター風味に描いた方が魅力的に思えるし、おっとりどっしりなイメージのラウドボーンにも少し荷が重い内容になりそうです。陽気で情熱的なウェーニバルであれば、大穴のポケモンたちと交流を重ねてゆくという話に無理が少なかった。

 

 このように、今作は設定の方から登場人物やプロットが半ば自動的に決まりました。ウェーニバルで何か書けるというのは鳥フェチとして大きな喜びでもありましたし、風変りなガブリアスをはじめ、全体に鬱屈した雰囲気をウェーニバルの視点から書いてゆくのはたいへん楽しかったです。SVはエリアゼロという強大な未知がある種の不気味さを持っていたため、今作のようなじめっとした話も想像しやすかったです。

 

 余談ですが、今作は投票の結果、大会2位の順位をいただきました。全体的に、エリアゼロに流れる静かで壮大で少し恐ろしい、そんなような雰囲気が好感触のようでした。書きたかったところがそのまま評価点になるのは嬉しいものです。

 今作は、いってしまえばエリアゼロという環境そのものが主人公だったようなもので、ウェーニバルにしろトドロクツキにしろ、別なポケモンでもいくらでも成立させられました。最初から、キャラクター的な個性は不要かなと思っていました。ウェーニバルは推しでもあるので、次にウェーニバルで書く時は、もっとウェーニバルをチャーミングに書きたいですね。

 その点、ガブリアスはいいキャラになったと思います。訛り言葉を話すおじいさんのガブリアスは、今作における唯一の発明です。これが書いてみると、それほど違和感がなかったので、何をやらせてもしっくりとくるガブリアスのポテンシャルの高さを改めて感じました。脇役にすると本当に輝く。毎度のことながら、贅沢な脇役です。

 

 これが、私が書いたSVの初作品です。発売後一ヶ月時点だったこともあり、まだゲーム全般について掴みあぐねているところもありながらの執筆でしたが、なかなか味のあるものを書けました。これはこれで満足です。

 では次いきましょう。

 

 

 

 

Guardian of Materialism 完全版

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 昨年書いたもののリメイク、というか、加筆修正したものです。それを1作とカウントするのも卑怯な気はするのですが。

 本作はだいたいのことを昨年の振り返りの際に語りましたので、今回はなぜこれを書かねばならなかったのか、ということでも。

 

 昨年にも語ったとおり、本作はJMoF2023のケモノストーリーコンテストへ参加するために書いたもので、2万字程度に収めるために内容を大幅に削除せねばなりませんでした。その結果、本文に何度も用いられる「パンとサーカス」という言葉について、意味の誤認を誘発する恐れ、あるいは私自身の知識の誤りを疑われる恐れがありました。

 ストーリーコンテストへ投稿した時の内容では、「パンとサーカス」はどちらかといえばポジティブな言葉のように感じられそうだったのです。主人公であるオオカミは、この言葉をよい意味に解釈しているからです。しかし本来はそれほどよい意味の言葉ではありません。ここで詳細を説明はしませんが、肝心なのは、「オオカミはなぜそれをよい意味で解釈したのか」というくだりの大部分を削除せねばならなかったからです。

 ギリギリのところで最低限の説明は残せたものの、そのままでは重要なところで思い違いをしている、見当違いな小説と見られかねませんでした。

 また、削除した中には、オオカミが山の主になる決意を固めるに至った様々なシーンが含まれていましたので、そんな部分が欠けたままの不完全な状態で世に出したということ自体、たいへん気持ち悪かったんですね。ですので完全版にして公開するのは、ちょっとした始末書のような感覚でした。私自身、けっこう気に入っていた作品でもありましたので、場所を変えてでもきちんとした形で出しておきたかった。

 

 雑魚の集まりと馬鹿にして、見下していた動物たちに対して、オオカミは少しずつ愛着と尊敬を抱いてゆき、「おれがこいつらを守ってやりたい」と心境を変化させてゆく。その結果、逃げ出してきた館へ戻り、魔法使いの騎士として生きることになる。騎士・アルヴェスタはいつの時も、あの山の平穏無事を祈っている。その説得力が、完全版では強化されている……と、いいなあ。

 

 まったく関係ないことですが、私がいわゆる四足の動物で創作したのは、ほとんど初めてかもしれません。動物が、動物らしく生きている姿というのを、書こうと思って書いたことは一度もなかったのです。そういう意味でも本作は挑戦でしたし、その結果を中途半端で終わらせたくはなかったので、閲覧数やブックマークといった評価ではそれほどは奮わなかったものの、完全版を出したことで、自己満足の意味ではようやく花丸をつけられるようになりました。

 まあ厳密には、四足動物の創作といえば大昔に「あらしのよるに」の二次創作を、どこにも公開せずに書いていたりはしましたが、アレらは今にして思えば小説というのもおこがましいようなものですので、ノーカンで。肛門を見られるより恥ずかしい黒歴史のひとつやふたつ、誰にでもあるもんです。

 

 では次です。

 

 

 

 

鷲高校生の転遷 後編

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 キャプションにも書きましたが、七年ぶりの執筆再開です。

「鷲高校生の転遷」は、シシベさん原作のエッチ小説シリーズの二次創作です。前編はずいぶん前からpixivで公開しておりまして、絵描きのスオウさんにお声がけいただいたことで同人誌化もしました。

 某感染症の影響や、その他の諸事情などもあって、後編の同人誌化はしばらく凍結してしまったのですが、そのせいか今作を書くモチベーションが激減してしまい、気がつけば未完成のまま7年も経過してしまっていたのでした。7年あれば、小学5年生も成人します。それほどの期間、続編を書かずに放置とは、今作を読んでくださった方、同人誌を買ってくださった方に本当に申し訳ないです。

 

 何がひどいといって、今作、主人公の鷲くんには狼の恋人ができるのですが、エッチ小説でありながら前編では恋人の狼とエッチしていないのです。おあずけを喰らわせたまま長期間放置は残酷すぎます。昨年、私は10年かけて「名無しの4Vクリムガン」を完結させた訳ですが、4Vクリムガンは単なる趣味だったところ、鷲高校生は同人誌としてお金をいただいていますから、完結の重要さが比になりません。書かないといけない、でもちっとも書けていない……そういう宿題を抱えたまま、私は長いこと見て見ぬふりをしてきていました。

 なので、もうそろそろ書けそうかな、という気持ちで宿題に手をつけることにして、pixivでの連載を再開しました。

 

 長編というのは、すさまじく体力を求められる一方で、書きたいと思ったことはいくらでも書いてよいのです。現在、後編は6話ほどを投稿していますが、鷲くんたちが京都や奈良での修学旅行しているようすを書くのはとっても楽しいです。それに、ボロボロに傷ついた鷲くんがさまざまな葛藤を乗り越えた末にようやっと辿り着いた狼とのエッチシーンは、話が終わったわけでもないのに感無量の思いがありました。べつにエッチが書きたくて始めた小説でもなかったのですが、クソデカ感情の伴うエッチシーンはとてもよいものです。愛のあるエッチを書く時は、いくらでも感情をデカくしてよいと決まっているのです!

 そして何より、本作では大好きなVivienne Westwoodの洋服をこれでもかと書けます。Vivienneと鷲くんの出会いは、本作では最重要といってよいファクターですので、むしろVivienneを書くことに手を抜いてはならないとさえ言えます。

 実は鷲高校生を書いていて嬉しかったことのひとつに、「Vivienne Westwoodという存在をこれで知った」と言ってもらえることがあります。とはいえVivienneはハイブランド、さすがに売上貢献とまではいかないでしょうが、それでも好きなものを知ってもらえるのはそれだけで大きな喜びです。

 Vivienneなんて見たことも聞いたこともなかった人が、私の小説を読んだことで「Vivienne」を日常語のように話すようになるのです。考えてみれば、とてつもないことです。たいへん身にしみることです。

 

 楽しいことばかりではありません。

 私の書くものですから、しかも長編ですから、それは必ず出てきます。鬱要素

 本作は性被害を伴う学校でのいじめや、同性への恐怖、不登校による将来への不安など、読者の気持ちを暗くさせる要素のオンパレードです。原作の鷲高校生シリーズでは、陰鬱な展開がほんの少しはあったりしますが、決してそこが主題ではなく、あくまでライトなエッチ小説です。そこを私がシリアス方面に特化させると、このような作風になりますという、これも一種の原作レイプかな……

 さておき、鷲くんにのしかかる課題は生易しくはありません。

 再三言うことですが、しんどい話を書くのは作者もしんどいのです。でもそこを乗り越えてゆくのが私はフェチなので、自分で自分を苦しませるという、SだかMだかわからない状況が度々起こります(たまたまですが、今回振り返っている前2作も、鬱とまでは言わずとも決して明るくはないシリアス調ですね)。

 しかし、登場人物と読者へストレスを与えるのは、それを解決した時の爆発的なカタルシスとしてありふれている手法ですから、別段珍しくもなければ、とりたてて私の小説が技術的に優れているわけでもないでしょう。

 まあドラマや映画とは違い、小説ではカタルシス皆無の胸糞エンドも比較的多いわけですが……今作では絶望から這い上がる鷲くんの姿を描きたいというのが執筆の第一因ですので、それほどひどい話にはならない予定です。

 

 実のところ、鷲高校生は7年間まったく放置していたというのでもなくて、ある程度は書き進めた分がありました。前編を公開した時点で完結までのおおまかなプロットは決めてありました。

 しかし、そこは7年のブランクがあります。当時の文章ではさすがにあんまりだなと思ったりもしますので、ほぼ全体に修正が入れるのですが、この作業は単に新作を書くよりも疲れてしまいます。

 作業としては加筆修正なので、厳密には「今年書いたもの」とは言えない気もするのですが、執筆の労力は新作以上です。それが理由になって、pixivに6話を投稿して以降、再び執筆の手が止まってしまっているのが現状です。もう本当に、続きを楽しみに待ってくださる方々にはお詫びの言葉もないのですが、鷲高校生を書く筆は、とにかく重い……

 

 冒頭、複数の投稿を1作品としてカウントしていると書きましたが、本作がまさにそれです。何も1話ごとに振り返ることもないでしょうし、なによりこれ、完結してませんから、語るわけにはいかないこともたくさんあります。そんなので作品数をかさ増ししたところで見栄を張る以上の何もなりませんし、今年書いた鷲高校生については、今回の記事でひとまずおしまいにします。来年は完結させられるかな……

 

 

 

 ちなみにこれは前編の通販ページ。めでたく完売となり再販はしていません。

alice-books.com

 

 

 

 以上、3作を持って、私の2023年はスタートしました。

 いずれも「書かねばならないから書いた」という作品でした。中でも鷲高校生については、連載を続けてゆくなかで、以前にチャレンジした「pixivでの毎週投稿」を再びやってみようという試みもありました。

 しかし前回は8ヶ月ほど継続できたチャレンジも、今回は2ヶ月半で途切れてしまいました。執筆モチベーションの低下とあわせ、なんだか落胆の気持ちが大きいのが現状です。もうなにやら触れるのが気が重いタイトルになってしまった……

 

 この一年は、趣味での執筆以外にも、いろいろな企画や同人誌などに参加させていただきました。結果、ビジネス的・ノルマ的な執筆にはそれほど苦労しないということはわかったのですが、反面、それに慣れすぎたのか好きで書くということがてんでできなくなっています。とくに鷲高校生のような重めの連載については、もう意欲が壊滅的です(後編の同人誌化するによって締切ができたりすると、それはそれでやる気になれそうなんですが)。

 

 漏れなつ。を書いたときはどうしていたんだったかなあ。あれらはいずれも60万字超という本格的な長編でしたが、私は過去、そのような連載を二度、完走しているのです。その時のガツガツした野心が、なんだかずっと湧いてこない。

 

 こうして一年を振り返ることで、少しでも創作の意欲を取り戻す……というか、まずパソコンで文章をしたためるという習慣を自分の中に呼び起こすことができればいいんですがね。実際、当時を思い出しながら作品語りをやっていると、こんなものも書きたいな、次はこういうふうにしよう、という考えは浮かんできます。

 しかし人間、小説を書いているだけでは生活できませんので、まとまった時間を執筆だけにあてられないというのも大きいです。思うに、小説を書きたいという趣味に対して、人間生活はあまりにも邪魔すぎる!

 まあそんなことを言ったら、ほぼすべての小説書きは生活と創作を両立させているわけですから、やはり単に今の私に小説を書く気力がないだけです。なんとかせねば、なんとかせねば……

 

 

真実を以って、理想に伝う/もっと肩身が狭いルカリオ/農業オオカミと男ロリータ

 

 

 いよいよ2022年も最後となりましたが、一年が終わろうと明日は来ますし、毎日は続いてゆくし、新年の私も変わらずなにかしらを書き続けるでしょう。新しいことに集中するためにも、やり残すことのなきよう語り尽くしてしまいましょう。

 最後の振り返りです。

 

 

 

 
名無しの4Vクリムガン(仮) ‐ 真実を以って、理想に伝う ‐ 後編

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 このシリーズが完結した日に、このブログで一応の振り返りなどをしたのですが、あのときは全体の所感といいますか、シリーズに対する気持ちを書いたので、内容には極力触れずにいました。なのでここできちんと語りましょう。

 

 今作を書いていてとても苦労したのが、Nの扱いでした。Nというキャラクターを考えればクリムガンとの親和性も高そうに思えましたし、近シリーズのラスボス的存在として最初から想定してもいました。

 無口な主人公たちとは違い、Nは明確な個性を設定されています。「ポケットモンスター ブラック・ホワイト」はNの物語という側面もありますし、たいへん人気のあるキャラクターでもあります。生半可な扱い方はできません。4Vクリムガンは基本的に好き勝手に書いてきたシリーズでしたが、ここでとうとう、きちんとした二次創作をしなければなりませんでした。原作のNのイメージからあまりにもかけ離れたことは書けないのです。

 地味にネックだったのが、「Nは数学の天才」という裏設定です。恥ずかしながら、私は理系分野にはほとほと疎いものでして、高校数学でさえちんぷんかんぷんだったりします(美術の高校に通っていたのでそもそも数学の授業がなかったというのもあるが)。作者より頭のいいキャラを書くのは原理的に不可能ですので、私などではNを書くことなどはっきり力不足なのでした。

 しかし幸い、原作本編ではこの設定はそれほど明確には出てきませんでした。数式に関するセリフがいくつかあるくらいでしょうか。クリムガンと数学議論などできたら面白そうではあったのですが、書けないものは仕方ない。あまり数学にこだわらない方向性でNを書き、なんとか誤魔化しました

 

 次に、Nの相棒をゼクロム・レシラムのどちらにするかでも迷いました。個人的にはNにはレシラム、トウヤ・トウコにゼクロムのイメージが強いですが、ここはフラットに見るべきです。

 クリムガンが相対する敵としては、理想の存在のゼクロムよりは、真実の存在のレシラムの方がふさわしそうな感じがします。ただ、クリムガン自身も「正常人が到達しえない真実」の世界観に生きているキャラクターではありましたので、真実/レシラムを味方につけてNのゼクロムと対決するのも面白そうでした。まあ今作はNとの対決だけを書けばいいものでもありませんでしたし、レシラムがクリムガンに同調する理由付けなども加えて事態が複雑になりすぎると、ほかの内容とのバランスが取れなくなりそうでした。このシリーズ自体、それなりにややこしい話をしますので、Nとの衝突くらいは背後関係などすっきりとさせてわかりやすく書いたほうがよさそうに思い、今の形に落ち着きました。

 

 私がしばしば思うこととして、ターン制を採用したゲーム的なポケモンバトルは、勝敗を決める競技の観点では無理がありすぎるということです。トレーナーがポケモンに指示を出して、ポケモンが技を放つ。それを見て相手トレーナーもポケモンに指示を出し、技を受けるなり避けるなりするわけですが、受け手のトレーナーがそんな指示を出している間に、相手の技はどうなっているでしょう?

 リアルタイムに状況が変化する戦闘において、指示を出しながらの対応などどだい不可能なのです。これについては昔「最強のルカリオ」でも触れ、戦闘をかなりハイスピードな描写にしたものです。ポケモンの身体スペックを考えれば、そうなりそうなものだと思います。

 というわけで、トレーナー同士のポケモンバトルならともかく、ルールに守られない戦闘行為を書く場合、私はそういうことを踏まえて書きます。攻撃行動なども技にはこだわらずシンプルな肉弾戦をとる場合もあります。今作でも、クリムガン対レシラム戦は意識してポケモンバトルっぽくならないように心がけました。1ターンに行動は一つだけなんて、命の奪い合いにそんな甘えは通用しませんポケモンだってポケモンを食べて生きている以上、ポケモンバトルなどという生易しい戦いのほうがむしろ稀とも思えます。

 

 BWのストーリーは、最終的には主人公とNが互いの信念を否定しあうために戦うものでした。結果、主人公に敗れたNは考えを改めてゆきます。今作のNはそういった経緯を辿ったあとのNとして描きましたが、主人公と戦う以前のNであれば、クリムガンに共感できる部分もあったかもしれません。

 そういうNを見てみたかった気もしますが、このクリムガンとNが団結してしまうと、どう考えてもろくでもないことにしかなりません。クリムガンは野生のポケモンだからまだしも許されているようなものを、レシラムとかいう伝説のポケモンを従えたNなんかが協調してしまったら実行力がえぐいことになります。話の収拾がつかなくなるのが目に見えています。

 これまでは面白そうなネタでエピソードを書いていればそれでよかったのですが、今作に関しては、話のまとまりというのを意識しないわけにはいきません。私はこのシリーズの完結を書きたいのです。

 

 

 N以外にも触れましょう。ポケルスについてです。

 クリムガン厳選漏れのポケモンですので、もちろんポケルスにも感染しています。本文にはまったく書きませんでしたが、これはプロローグの時点からずっとそうです。

 ポケルスの設定に関してかなりの拡大解釈と捏造をしていますが、それよりなにより、明かすかどうか最後まで悩みました。これまでクリムガンがしてきてこと、考えたことの一部あるいは大部分がポケルスによる影響だと判明してしまうわけです。クリムガンは自我が弱いと何度か作中で書いてきましたが、これによって本当の意味でクリムガンの自由意志が疑わしくなります。言ってしまえば、クリムガンはやりたいようにやっているつもりでいて、実際にはポケルスに操られていたようなものですから、自我なんてものを軽視しているクリムガンの話とはいえ、相当グロい話になります。あえてそうとは書きませんでしたし、あくまで解釈次第なところでもありますが、そう理解されても仕方がない部分です。

 クリムガンがそのことをどう感じるのかに関わらず、ポケルスの設定はこれまであった印象をひっくり返しかねません。それほどたくさんではないにしろ、このシリーズに長く付き合ってくれた読者に対して、最後にぜんぶを台無しにしてしまうようなことを、してしまっていいのかどうか……

 でも結局、書くことにしました。それによってしか書けないことがあると思ったのです。それに、この設定が悪印象になるとこちらから決めつけるのもよくない。語れることは、可能な限り明確にしておくべきです

 

 そもそもどうあれ、ポケルスというのはいずれ消滅するウイルスです。原作では72時間が経過すると消滅するところを、今作ではそれなりの長期間、生存していますが、システム的に72時間というだけで、あの世界ではどれくらい生きるのかは明記されていないのがポケルスですから、ここは存分に二次創作させてもらっています

 生まれたときからそばにいて、影響を残し、消えてゆく。こう書けば、ポケルスもなかなかロマンティックな存在です。そういうふうに活かそうと思いました。

 

 ポケモンの孵化厳選の経験がある方ならご存知のことと思いますが、ポケモンは場合によっては親から個体値、技、性格を引き継ぎます。私はこの「技引き継ぎ」の部分を、知識や経験、すなわち記憶の継承と受け取りました。そういうことができる不思議なモンスター、それがポケモン。その部分をポケルス繋ぎ直し、このようなクリムガンが誕生した、というわけです。

(やはりこういうことを作外で明かすのはとてもいやですね。でもこれは本編中ではだれの視点であっても語りようのないことでしたので、致し方なし)

 

 

 少しだけ、クリムガンについても語ります。

 さまざまなエレメントモデルを通し、クリムガンは最後に、ある程度の納得と妥協を獲得できました。「他者」などろくに顧みないように振る舞いながらも、少なからず受け取ってきたものはあるのです。微塵も成長していないわけではない。それを読み取ってもらいたいような気もするし、まったくそうとは感じられないのもまたよしです。でもこんなことを書いたら、「クリムガンは成長した」という事実が、もう二度と消えはしないでしょう。ああいやだ。語れば語るほどクリムガンが死んでゆく気がする(それを思うと、今作で手紙を書こうとしたクリムガンは本当に自殺寸前だったのだなあ)。

 ただ、クリムガン的にはこれを成長と言っていいのかどうかもわかりません。その変化を好ましく感じて「成長」と言ってしまうのは、正常人の考えです。アレはそんなふうに理解されたくなどないような気がします。なので単に「変化した」、と言うべきでしょうか。本当にいちいちがやかましく、こまっしゃくれた考えですが。

 でも、そのような形でしか生まれてこられず、生きてゆけない命もある

 世間が望むところと合致しない心を持ってしまったら、いったいどうすればいいのでしょう? ありのままの心で生きてゆくには、世界はあまりにも狭量すぎる。みんながみんなありのままでいたら、世界のほうだって困るに違いない。しかし「自分」を押し殺して生き延びたところで、息苦しくていずれ窒息しそうだ。

 どうしてこんな不自由な思いをしなければならないのでしょうか。こういうふうに生まれたというだけの理由で、だれが、どういう権利があってこんな不自由を強いてくるのでしょう。それならいっそ、こんな「自分」なんてなければいい。自我なんてものがあるからこんなに思い悩まされるのです。計算と論理だけにすべてを任せることができれば、どんなにか楽に生きてゆけるでしょう。

 そう思うのに、手放し難いのが「自分」です。

 

 理解しろ、とは言うのは無理があります。というよりも、他者の考えなんて理解できるほうが稀です。理解などされなくてもかまいません。

 でもせめて、こんなやつがいるということだけは拒否しれくれるなと思うのです。

 そういう考えの凝縮が、このクリムガンでした。クリムガン、というかこのシリーズ自体、考えれば考えるほどに、クリムガンというポケモンの姿を借りて私が言いたいことを代わりに言わせているだけのような気がしてなりませんでした。

(でも、まあ、創作ってそんなようなものじゃないですか。多かれ少なかれ)

 

 

 このシリーズのクリムガンは、なんとも愚かで、哀れです。あまりにも救いようのないキャラクターを生んでしまったと思います。クリムガンの望みは、到底叶えられないものばかりです。根源的な救いなどアレには決して訪れないでしょう。幸せになるなんてまず不可能のように思えます。

 それでもどうにかこうにかやってゆく物語を書き続けていると、なんて愛おしいんだろうと思うようになりました。なにもかもが不満で、怒りや悲しみどころか殺意さえ湧いてくるというのに、平気なような顔でそれを手放して、うまいこと計算して生きてゆこうとするのが私のクリムガンです。それを不幸だともたいして思っていない。生き方が痛々しすぎる。そんな姿があまりにも愛おしい

 でもそれも、もうそろそろいいんじゃないかと思ったのでした。

 

 

アニポケでは不思議とヒーロー的な扱いが多い。

 

 

 だれにも理解されない、だれともわかちあえない、だれとも一緒にはなれない――という話ばかりを書き続けるのは、どうも自傷行為じみていて、もうじゅうぶんだと感じます。ある程度、吐くことは吐きました。ぜんぶとは言わないまでも、少しくらい伝わるものもあったでしょう。

 シリーズ完結までの十年で、私も30歳になりました。実感こそないですが、私はもう大人になっているのです。これでもいい加減、少しは角も取れて丸くなりました。スポイルされたとも言えますが。完全に、とはいかないまでも。

クリムガンを にがますか?」の選択肢で、「はい」を選んでやりたいような気になりました。いよいよですね。

 

クリムガンを にがしてあげた。バイバイ、クリムガン!」

 そんなところです。

 

 このシリーズについて、語りたいことは山程あります。聞きたいと言われれば拒絶もしないでしょう。そういうのは楽しいものです。嬉々として語るでしょう。私はクリムガンではありませんので、わかりあうという行為を憎悪まではしません。全然、他人とわかりあいたいです。

 でも基本的には、このシリーズの感想は読者の感じるままに任せておきたいです。語りたいというのは私の欲望ですが、作品にとってはあまり語るべきではない……ということはままあります。なので、ひとまずはこれで。クリムガンは私の手の届かない場所へ行って、好き勝手にしててくれればいいのです。

 ずいぶん長い間、楽しませてもらいました。このシリーズを書き、完結させられたことは、私のみみっちい誇りです。

 では、次にいきましょう。

 

 

 

 

A特化ダイマエース型ルカリオは伝説幻無制限環境でもっと肩身が狭い

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 このルカリオで新作を書くことになるなんて、想像もしませんでした。

 でも仕方ないじゃないですか。環境があれ以上の地獄と化したのですから

 

 剣盾末期、ランクマッチは最後の悪ふざけのような、お祭りじみたレギュレーションになりました。伝説・幻のポケモンを無制限に使用できたのです

 

 は?

 

 新しく幻のポケモンがランクマッチデビューとなったわけですが、幻のポケモンは伝説に比べれば幻のポケモンは合計種族値が低いので、脅威としてはまだしも少ないです。問題は伝説6匹パーティを組めるようになったこと。こうなってはもはや、ルカリオどころかサンダーや霊獣ランドロスでさえ明確な理由がなければ採用が厳しい。伝説2匹環境では使用に制限があったからこそ、エース運用ができるポケモンが人気でした。受けやサポートは一般ポケモンに任せればじゅうぶん。それが無制限に使用可能となれば、当然合計種族値の高い伝説に任せるに決まってます。

 ルギアやルナアーラのような、超優秀でありながら伝説枠を割いてまで採用するのはもったいないと言われたポケモンも、当たり前のように見かけるようになりました。優秀過ぎるザシアンの影に隠れていた不遇伝説のザマゼンタでさえ壁貼り要員として大活躍していたのです。

 どこを向いても禁止級伝説です。地獄すぎるだろ

 

 そのころになると、もうルカリオを使うことがはっきり苦痛でした。これはルカリオが弱いという話ですらありません。種族値の足りないポケモンすべてが土俵に上がることすら許されなかったのです……と、こんな書き方はよくありませんね。私がよく見るYouTubeチャンネルの対戦実況動画では、一般ポケモンどころか未進化ポケモン縛りで伝説・幻無制限環境を戦っていたのですから。まさしく、ポケモントレーナーの姿です。ルカリオを活かしきれない私がただ実力不足なだけです。

 ですがいずれにせよ、環境としてルカリオが厳しいことは事実です。活躍できるバトルはまったくのゼロではありませんが、選出できる機会はぐっと減りましたし、パーティの主役と呼ぶことはできなくなりました。こんなことでは、対戦がもう全然つまらない……

 そんな環境が一年以上も続けば、私はいつの間にか、ポケモンバトルを楽しめなくなってしまっていました。ルカリオが役に立たないポケモンバトルなんて……

 

 

 

モナーが狂喜乱舞したハロウィンの公式イラスト



 ただ、この環境も悪いことばかりではありませんでした。幻のポケモンを使えるということは、ゼラオラを採用できるのです!

 

 こんな環境ですから、せめて創作でくらいルカリオをエッチな目に合わせてホクホクしなければやっていられなかったのです。伝説や幻たちにいい子いい子されながら死ぬほど気持ちよくなるルカリオを書けるのは、このレギュレーションのうちだけです。ヤケクソのようになって書きました。

 

 前作ではルカリオバンギラス以外に野生のウォーグルワルビアルゴロンダを登場させましたが、セリフは一切なしで、漫画でいえば顔の映らない竿役のような扱いでした。しかし今作で書くのは、パーティの仲間たちとのエッチです。どうあっても個性を書きわけねばなりませんでした。前作でも手持ちの仲間同士でのわちゃわちゃ感は好評だったので、今作でもある程度はその効果を狙っていました。

 どのポケモンにどのような性格付けをするのかが問題でしたし、パーティとしてある程度機能する組み合わせを考えるのにひと苦労しました。今作では手持ち全員にエッチシーンを用意するつもりだったので、あまりヘキでないポケモンを採用するのはためらわれたのです。しかも伝説のポケモンというのは往々にして体が大きく、ルカリオとの体格差がえらいことになってエッチが無茶になります。

 あまり体が大きすぎず、それなりにエッチなポケモンだけを集め、一応パーティは完成したものの、性格で最後まで難しかったのは、ザシアンでした。ここでもおまえはおれを悩ませるのか。

 あまりオラオラした性格にするとバンギラスと被りますし、クール系にしてもゼラオラと被りそうな気がします。明るくても暗くてもいけない。かといって、変化球のようなキャラはミュウとホウオウでもう2匹もいるのです。なかなかしっくりくる性格付けが思いつけませんでした。ここがなかなか埋まらずに、長いこと書きだせませんでした。

 そこで某氏に相談したところ、「いっそ犬でいいんじゃん」という提案をいただきました。某氏はある日、道で超デカい犬を見かけたことがあって、その犬はおとなしくしているだけだったのですが、それだけでも大変にかわいかったというのです。デカい犬はかわいい。

 まったくの無口の犬キャラ、意外といいかもしれません。文章にも緩急がつきます。そのまま採用にして、ようやく書き始めることができました。始まりさえすれば、これが実に楽しかった。さすがに6Pは書ける自身がなかったので、3~4Pを何回かやるというふうにしましたが、これはこれで、いつも書いているようなエッチシーンとは違う味付けができて、いい雰囲気になりました。

 

 

 思い悩む推しはかわいいものです。そして、そういう推しはどろどろに甘やかされればよいのです。対戦は苦しかったですが、今作を書けたのもとんでもないレギュレーションがあってこそ。やはり、ポケモンで二次創作をする者は一度は対戦に身を投じるべきなのです。含まれる愛情が桁違いです。

 

 最新作のSVは、現在準伝説が使用不可の環境で、新システムのテラスタルダイマックスやZわざよりもルカリオと相性がいいです。きっとルカリオは、パルデアではそれほど肩身が狭くないし、準伝説たちの環境になったとしても、まずまずやってゆけそうです。対戦でルカリオをバリバリ選出できて嬉しい反面、このシリーズの続編はもう書けないかもしれません

 それでもパルデアでのルカリオで一本、いずれは書きたいなと思っています。今度はどんなルカリオが書けるでしょうか。今はまだ構想もなにもありませんが、新環境もルカリオとめいっぱい楽しみます。私のポケモン二次創作は、いつだってそこからなにかが始まるのです!

 

 

 

農業オオカミが幼なじみを赤ずきんにしちゃうエッチなクリスマスの話

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 では、2022年最後の投稿になるであろうクリスマス小説です。これにて2022年を締めくくりましょう。

 

 キャプションにもあるとおり、ケモノストーリーコンテスト2023に向けて用意していたネタを、一度ボツにして書き直したものです。ケモノストーリーコンテストが開催されるケモノコンベンション「JMOF」は1月に開催されますので、応募自体は9月ですが、時期を合わせて冬の話を書いていました。

 時期も時期なのでクリスマスにも触れてはいましたが、本線ではありませんでした。ただこれを改めてクリスマスに出すのなら、もう少しクリスマス感をアップさせて書いたほうがよかった気がします。なんかクリスマスっぽくねえよなあ?

 それから、もう少し書きたいことがあったのですが、クリスマスに間に合わせようという焦りがあって、失念してしまいました。そんなに長いものでもないので、そのうちしれっと加筆すると思います。

 

 ガブジュナの件でストレートなラブロマンスを書けるということもわかったので、今作は最初から凝った話にするつもりはありませんでした。すっきりと読めるラブコメでいこうと思っていたのです。

 とはいえ、最初はもう少しディープな内容を考えていました。たとえば、今作に登場させた佐々木ですが、彼は最初、光に対して「ライブではそういうカッコはしないでくれよ、恥ずかしいから」と暴言を吐く場面を構想していました。そしてショックを受けた光を、Vivienne Westwoodを着るような人間ならそれくらいは貫いてみせろと元が元気づけて、絆を深めるという一幕です。ただ、実際に書いていると今作は実に平和的で、元と光がホームステイ期間をエンジョイするだけでも、どうやらそれなりに楽しめるものになってきていました。ストーリー的の盛り上げを意識して、わざわざ水を差す必要もなさそうだったのです。私のやりがちな、意味不明すれすれのポエティックさも徹底的に排除しました。これは今作の雰囲気に合わせるためでもあり、ストーリーコンテストに出すうえで、アクの強さを抜くべきと考えた名残でもありました。

 

 

おとぎの国の赤ずきんちゃんジャンパースカート・フード付きケープセット。

 

 

 3月に東京へ行く機会があり、新宿のVivienne Westwoodを見にいくついで、BABY,THE STARS SHINE BRIGHTも見にいったところ、ちょうど「おとぎの国の赤ずきんちゃんジャンパースカート」が再販され、飾られていました。BABYのお洋服はやはりとんでもなくキュートでカッコよく、中でもこの赤ずきんジャンスカは飛び抜けていました。それ以来、「これを着たキャラクターをなんとかして書きたい」とずっと考えていたのです。今作もまた、萌えが先行した話でした。

 ただし、書くのであればやはりケモホモもしくは獣×人のBLで書きたい。そうなると必然、ロリータを着る男を書かなくてはならない。男同士の恋愛ですらじゅうぶんに障害あるロマンスだというのに、加えてロリータまで着せるというのは、難儀でした。どうあってもアブノーマルになりすぎる

 しかし、そんな懊悩などなんのその。Vivienne Westwoodのパンクの精神は、女装程度でうろたえないのです。元々、帰国子女のキャラクターとのロマンス物を書きたいとは思っていましたので、ここはロンドンからの帰国子女で、Vivienneな男の子を登場させることにしました。そしてBABYを着るとなれば、やはり男とはいえヒロインメイクは外せない。光・レイモンド・アルヴェスタの誕生です。

(アルヴェスタといえばストーリーコンテストの応募作品でもこの名前を出しました。元がストコン用のものだったので、今作のアルヴェスタをストコン応募作の方へ流用した形です) 

 ただ光は、いわゆる男の娘というのとは違いますので、見ただけでは女の子にしか見えないが、脱げばしっかり男の体というお約束を、今作ではあまり書けませんでした。正直、BABYのお洋服と、男がそれを着るロマンを描けた時点で、それなりに満足してしまったのです。投稿までの猶予がギリギリだったこともあり、エッチシーンは事後処理的に執筆してしまい、失念していたのです。せっかくBABYな男の子とエッチなことをする話を書いたのに、とてももったいないことをしてしまいました。

 元が農業をやっているという点も、活かせていたかどうか。別に農家でなくとも、この話は成立させられるような気がします。実は今作はそもそも、BABYや帰国子女よりも先に、農家なオオカミさんを書きたいなという思いで書き始めたものでした。その割に、光と元のロマンスに農業がさほど食い込んできていないように思えますし、そもそも農家の暮らしをもっとたくさん書きたかった。畑を荒らすハクビシンやイノシシに悩まされたり、漁師のぞんざいな仕事ぶりに腹を立てたり、野菜作りで感じる様々な歓びなども、もっともっと文章にしたかった。

 やはりこれをストコン応募作にしなくてよかったです。小説の完成度という意味では、無料公開するのがせいぜいでしょう。

 

 ただ、今作を書くこと自体は楽しかったです。農業について調べる作業はとても興味深くて楽しかったですし、光に対してなんとなく引け目を感じている様子を書けたのもよかった。VivienneやBABYなどは、言うまでもありません。しかしまだまだ書き足りない。なのでできれば、またロリータを書きたいです。リベンジマッチです。

 

 

ALICE,and the PIRATESのくりすくん。実は元のモデルだった。

 

 

 

 

 以前の記事でも書きましたが、2022年はポケモンばかり書いていたような気がしていたので、今作はエッチあり一次創作のリハビリ的な部分もありました。なので、まあこんなものかなという感じもあり、同時にここまでしかできなかったという悔しさも残りました。

 正月用の小説も、ちょっと書けるかどうかわからないところです。時間が足りないというのもありますが、ネタ出しが不十分で、つまんないものしか書けないような気がするのが理由です。書けたとしても、このぶんでは三が日に間に合わせるのもちょっと無理でしょう。

 やっぱり時期のものは、その時期になってから書くのでは遅いです。余裕が足りず、どうしても雑に書いてしまいます。来年からは、前もってある程度仕上げておくことを心がけようと思います。

 

 そんな具合で、ひとまず2022年の執筆作について振り返り終えました。これ自体も、あとから考えれば書きたかったことが思い浮かんだりしました。年内に振り返りを済ませるには、一日で何作を取り上げるかというペース配分もあり、同時に小説も執筆してと、どうもバタバタしてしまいました。やっぱり何事も、余裕をもってとりかかるのは大切です。クリスマス小説や正月小説もあらかじめ準備できていれば、ブログの方をゆっくり書けるのです。

 この調子だと、来年の豊富は「計画性」が主なところでしょうか。こういうのも、定期的に創作を続けているからこその学びです。2021年以前は結局、書きたいときに書けるようなものを書いていたにすぎなかったので、「とりあえずなにかしらは書く」という意識を持って書くようになってから、たくさん学びがありましたし、小説書きの意識がいくらか高まったように思います。

 

 もう2022年は残すところ20分を切りました。このブログが、今年じゅうにやり遂げるべき最後の仕事です。

 皆さんにおかれましては、今年も仁王立ちクララにお付き合いくださり、ありがとうございました。来年もぜひ、応援をお願いします。

 では、よいお年を。

 

 

肩身が狭いルカリオ/夏バテに効くガブジュナ

 

 
ようき最速ASルカリオは禁伝環境で肩身が狭い

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 私は「波導の勇者」以来のルカリオ推しですので、ランクマッチでの対戦にも必ずルカリオを採用しております。が、ルカリオがまったく刺さらない環境というのも当然あるわけです。ローブシンや霊獣ランドロスが登場した第5世代と、ダイマックスとの相性があまりも悪い第8世代などはとくに苦しかった。

 推しが活躍できないランクマッチというのは、まあ楽しくないものですルカリオの枠に違うポケモンを採用できていれば、と思ってしまう一方、ルカリオを活かしてやれない自分の実力不足も痛感されます。かといって、ルカリオを軸にパーティを構築している以上、代わりに別のポケモンを入れると、それはそれで具合が悪いのです。

 ルカリオポケモンバトルがしたくてプレイしているはずなのに、次第にルカリオを使うことが縛りプレイのように感じられてくる。これがとてもつらい。

 

 第8世代。すべてのポケモンダイマックスできるというシステムは、一見どんなポケモンであっても活躍する機会が広がるように思えます。しかし実際にはメガシンカのように、ダイマックスと相性のよいポケモンほど強く恩恵を受けるシステムでした。だいたいダイジェットのせいです。

 こちらがギャラドスをピンポイントで対策するためにかみなりパンチを採用しても、ダイマックスで耐えられてダイジェットですばやさを逆転され、起点にされてしまうのです。4倍弱点を平然と耐えるな! ではこちらもダイマックスを切って対抗しようにも、ルカリオはダイジェットを使えないので逆転したすばやさはどうしようもなく、タイプ一致のダイナックルは威力90インファイト以下。ダイスチルは追加効果がぼうぎょランク上昇と、中速・低耐久のルカリオでは活かしづらく、そもそも耐久力が低く倒されやすいうえ、A110C115と敵への圧力もかけられないルカリオでは、ダイマックスを切ること自体が戦術としてそれほど強くありません。

 エースバーン、ドラパルト、トゲキッスアイアント、パッチラゴン……環境上位は、ルカリオが戦ってゆくにはことごとくつらい相手ばかりです。ただでさえそのような、地獄の環境でした。それが挙げ句の果てには……

 

 

終わりの始まり

 

 

 伝説のポケモンを使えるルールでは必ずトップメタとなってきたポケモンがいます。カイオーガイベルタル、ゼルネアスです。私は公式大会などに出場したことはないので、知識としてしか知らなかったのですが、いよいよランクマッチでもやつらと戦わねばならない日がやってきたのでした。

 それに加えて、剣盾にはみなさんご存知のあいつがいるのです。ザシアンが……

 もはや、ルカリオの主軸ではやっていかれない環境でした。あまりにもスペック不足。そんな環境でも使用率1位のサンダーはマジでなんなんだ

 いったいルカリオにどうやって生きてゆけと言うのでしょう? これではもう、環境トップメタの性処理役にでもならねばどうしようもないじゃないか

 

 以上が今作の着想でした。我ながらひどい話だ。

 

 

 ガオルカエスストでも対戦環境には触れてきましたが、どうやらポケモンで二次創作をしている人々というのは、それほど対戦には関心がないというか、ガチのポケモンバトルを取り扱っている創作を見かけないのです。

 私はそれなりに対戦もやる人間ですし、これだけ時間をかけて遊んでいるゲームですから、その経験を活かさない手はありません。誰も書かないのであれば、私が書いてやろうという気持ちがありました。今作はポケモンバトルそのものは主題ではないものの、環境に居場所がないことの鬱屈した気持ちを抱えたルカリオ、というデザインはやはり対戦という観点でポケモンを楽しんだ人間にしか書けないでしょう。

 

 努力を怠っているわけではない。やれるだけのことをやっている。それでも世間や現実がそれを認めない。このような憤りはエスストでも描写しましたが、ストリンダーが一応のよりどころを見つけられた一方、今作のルカリオは根本的にはなにも解決していません。だってなにをどうしても環境は続くんだし……

 そもそも今作は、剣盾のレギュレーションがランクマッチとしてはとても珍しかったので、そういう環境でしか書けないものを一本書かねば、という思いで執筆したものです。環境のせいで自己肯定感が低いルカリオが、なんとか自分に価値を見出そうとして体を使う話です。こういうもんはエロけりゃいいんだよ! 環境をダシにしてエッチなルカリオを書ければそれでいい!(でも5Pを描写するのはいくらなんでもキツかった)

 

 ルカリオというキャラクターからして、創作上、大抵は主人公気質な優等生の姿で登場します。今作ではちょっとネガティブなルカリオを書くことができたし、意外とこういう性格もしっくりきたので、楽しかったですし、我ながら、なかなか好きです。私の性質としても、ネガを書くと筆が乗る

 そして、そういう環境だからこそ、ルカリオを活躍させられたときの歓びは格別です。「おれが世界で一番ルカリオを上手く使えるんだよ!」という気がするのです。この興奮ばかりは、ガチ対戦を経験したことのない人にはわかりますまい。ポケモンバトルは試行錯誤と創意工夫の凝縮です。それがなんとも報われたように感じます。

 

 私はルカリオが好きで、ポケモンバトルが好きで、小説を書くのが好きな人間だから、こういう話も書けるのです。それが言いたいがために書いたようなものでした。でもまさか続編を書くことになるなんてね。それについてはまた別の記事で。

 

 

 

 
ガブジュナが夏バテに効くってマジ?

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 夏には夏しか書けないものがあります。

 ということで、クリスマスのときのあいつらの続編を書きました。

 

 なんだかんだといっても、前作はエッチにもっていくための話だったので、今作ではガブリアスジュナイパーの交流そのものを書きました。私の手癖は、なんとなしに物事をシリアスにしてしまいがちなのですが、前作ではキャラ萌えによるストレートなラブロマンスを書いたのです。「書こうと思えば、割とこういうのも書けるんだな」という新発見で、今度はわかりやすいラブコメを書いてみたいと、前作の時点からずっと思っていたのでした。この二匹、けっこう私のツボにハマったキャラになったので、また動かしたかったのです。

 

 前作で交尾までした二匹ですが、やることやってしまってからは、なんだかかえってプラトニックな感じになっちゃって……みたいなこと、あると思います! とっくに両想いなんだからキスくらいできるだろ、というところでなぜか一歩踏み出せない。そんなところも、いかにもラブコメしている。こういう話にできたのは前作があったからこそかもしれません。続編というのは、一から関係を構築する必要がないのが楽です。すでに積み重ねがある、という前提で書くことができます。前作でも今作でも、基本的にはジュナイパーが一枚上手なわけですが、今作ではジュナイパーにおいしいところを持たせたままにして、前作とのバランスを取りました。かわいいだけではなく、クールなジュナイパーもちゃんと書かなきゃね

 自分で書いたものですが、ロトムの目論見を看破してゆくジュナイパーを書いているときはもういけいけドンドンでした。このジュナイパー、最高にセクシーだぜ……と思いながら書いていたのです。やはりこの手のキャラが最高のヘキなんですね、私は。そしてそのクールな顔が崩れてしまう瞬間もたまらなくチャーミング。

 今まで私が書いたカップリングの中でも、ずば抜けてラブコメ映えする二匹ではないでしょうか。ほかの連中がすっかり通じ合って両想いであるのに対し、ガブリアスジュナイパーは互いに対してまだまだ意地を張ってるからでしょうかね。関係が完成している、とまでは言えない感じがするのです。

 

 

 ところで、ポケモンユナイトを題材にすると、ちょっといいこともあります。「よそのポケモン」を書きやすいのです。

 というのも、ポッ拳と同じようなもので、ユナイトバトルはエオス島特有のバトルなので、トレーナーはエオス島在住と思われます。そうなれば、よそのトレーナーのポケモンに会いにゆくことも容易なのです。原作ではトレーナーが旅をしている以上、ポケモン同士の関係を書こうにも、どうしても手持ち同士、野生同士になりがちです。それだっていかようにでも書き方はありますが、やはり書けることが少しずつ変わってきます。

 たとえば、今作のように主人から離れてポケモンだけで動く、ということもやりやすいです。ポケモンだけでちょっと表に遊びにいくくらいなら、できなくはない。

 ただ難点もありまして、1000匹近いキャラクターがいる原作とは違い、ポケモンユナイトは実装キャラが少ないのです。ルカリオゼラオラガブリアスジュナイパーを消費したので、あとはリザードンかウーラオスあたりでしょうか。バンギラスとエースバーンは他で書いちゃったしなあ……

 もうひとつ。ポケモンユナイトにはストーリーがまったくありません(かろうじて公式漫画がある程度)ので、ユナイトで創作しようと思うと話そのものはゼロから組み立てねばならないわけです。原作であった出来事などを拠り所にできない。ややもすると、「これユナイトじゃなくてよくない?」となるわけです。今作は、ギリギリのギリで、舞台がエオス島であることを活用していますが、前作や、もっと言えばゼラルカほどにはポケモンユナイトを活かせていません。そこらは今後の課題です。ユナイトでなにか書くことがあれば、ですが

 

 

12月29日に実装されたドラパルトのホロウェア。
なかなかかわいいが、Twitterでは「マックの店員みたい」と言われていた。

 

 

 しかし、ユナイトは今後もアップデートされ続けるタイトルです。ポケモンSVも発売されたことですし、第9世代の新キャラが実装されるのも時間の問題でしょう。もしウェーニバルなどが実装されようものなら、私はなにを置いてもユナイトで一本書くでしょう。

 ユナイトは未知の可能性を秘めたタイトルです。しかも、アップデートされ続ける性質上、いつ書いても「旬を過ぎる」ということがありません。これは創作してゆくうえでとても心強いことです。令和にわざわざBWの小説を読んでくれる人がどれほどいるでしょうか

 そう思うと、ガブジュナはもちろん、ゼラルカもまだまだわからないところです。今はネタがないだけで、いずれなにかしら書きたくなるかもしれない。それはDLCが来ない限り新素材を望めないSVよりも、よほどあり得そうなことなのです。

 

 

 それに、ユナイトバトルは競技性の高いバトルですので、いずれスポコンみたいな感じのものも書きたいかもしれない。漏れなつ。で二次創作したときにガチのサッカー小説を書ききった経験は伊達ではない。11対11のサッカーに比べれば5対5のユナイトバトルくらいどうとでもなりそうな気がするのです。サッカーよりよほどルールを理解してるし。

 でもそのときはガブジュナはお休みになるでしょうな。なんせこの二匹は雑魚キャラなので……

 

 

 

 

真実を以って、理想に伝う/浮舟/Guardian of Materialism

 

 

少女漫画とは思えぬ陰鬱なメインビジュアル。Fateかな?

 

 

 このところ、一週間頑張ったら三日は使い物にならないのです。

 この12月はとくにバタバタしていました。毎日の生活にプラスして創作やライブ配信や動画編集やブログなどをやろうとしても、とてもすべては手につかないのです。ひとまず優先順位を決めるわけですが、この場合は絶対に旬を逃せないクリスマス小説と正月小説が最優先。次いで一年を振り返るこのブログ。ライブ配信や動画編集はとくに機期限やノルマなどがあるわけではないので、手が空いたときで大丈夫。

 しかし小説にしろ動画にしろ、クリエイティブな楽しさはもちろんあれど、非常に体力を使います。もちろん好きでやっている趣味なのですが、パーッとストレス発散! という類の趣味ではありませんし、むしろ集中力と忍耐力が必要な苦しい作業であることがほとんどです。加えて年末というのは伝統的にソシャゲに大量のアップデートが来るものですので、その消化の間にDアニメストアフルーツバスケットを観てみたり。フルバは原作から大好きな作品ですし、たまにはこういったロマンティシズムに浸るのもよいです。世界で一番売れた少女漫画の記録は伊達じゃない(ギネスにも登録されています)。まあ、フルバはラブロマンスよりも薄汚い人間たちと、それによって傷つけられてきた人々の鬱屈が素晴らしいんですがね。さておき。

 

 11月と12月はなにかと多忙で、先日クリスマス小説をpixivにアップし終えたあとからら、なんとなく気が抜けたような感じになっています。このブログを書いているのも、合間合間の小休止のような感覚です。ブログは小説と違って、考え、創出するという作業が少ないです。同じ文字を書く作業ではありますが、負担が段違いに少ない。ただまあ、文字を書く休憩に文字を書いているわけですから、私は根っから文章を書くという行為が好きなんですなあ。

 では、前置きはこれくらいで、今日も振り返り、いきましょう。

 

 

 

 
名無しの4Vクリムガン(仮) ‐ 真実を以って、理想に伝う ‐ 前編

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 タイトルに「前編」とあるように、もちろん「後編」に続きます。4Vクリムガンで唯一、直接的な接続を意識して書いたものでした。とはいえ前編と後編でそれなりに話が断裂しています。後編では後編の話が展開するものの、これまでのオムニバス形式とは違い、前編を読んでいなければ話が繋がらない部分もあり……かといってひと繋ぎにするには話が長くなりすぎるし、急に違う話に変わってしまった感もある。というわけで、区切りのいいところで前後編に分けています。

 前編であまり多くを語ると後編で語ることがなくなってしまいます。なので今回は主人公のクリムガンからは少し離れようと思います。ワルビルです。

 

 

 今シリーズのワルビルは「夕陽の色の生存戦略テロル」で初登場した準レギュラーキャラです。クリムガンは、作中でタブンネないしワルビルにいろいろなことを問いかけますが、タブンネワルビルでは明確に役割が違います。タブンネへの問いかけが「正常な思考」からの返答を期待するものであるのに対し、ワルビルへの問いは、ある種の「自問自答」でした。タブンネは、クリムガンが「正常」を学ぶために必要な存在でした。しかし4Vクリムガンで表現したいことを考えるなら、「正常」を教えてくれる親や教師のような存在だけでなく、対等に近い立場で接することのできる旅の相棒も欲しかったのです。

 

 

可愛い(確信)

 

 

 なぜワルビルだったのか。

 私がBWを初めてプレイしたときに、見た目がなんとも愛らしいと感じたポケモンだったことはとても大きいです。しかし創作の主人公に選ぶほどでもなかった。

 ただ、「夕陽の色の生存戦略テロル」を書く際、どうしてもタブンネ以外の「他者」が必要になりました。簡単な話で、クリムガンタワーオブヘブンにずっと籠もる内容なのに、タブンネとの会話のためにいちいちポケモンセンターに戻るのはどう考えても不自然だったのです。また、根本的にはクリムガンとの相互理解が不可能な存在としてタブンネを描いている以上、あまりクリムガンの考えをすんなり了解してもらっては困るのです。「他者」のコントラストが必要でした。

 クリムガンと対等な立場で話ができるポケモン……さてどんなポケモンがいいだろうとイッシュ地方ポケモンたちを眺めていると、いました。腕組みという人間の動作を真似しているためにそれなりに聡明そうでもあり、4Vクリムガンの旅のスタート地点である「ヤグルマのもり」からもかなり近い場所に生息しており、私が初めて見たとき率直に「かわいい!」と感じた、あのポケモンが!

 中間進化というのも実によかった。立場的には対等でも、単純な性能ではクリムガンが圧倒している。友達として言葉を交わしながらも、クリムガンの無茶苦茶さに度々振り回される……そんな相棒像に、ワルビルはほかのどのポケモンよりもしっくりきました。ワルビルであれば、クリムガンの思考にある程度ついてこられる知能をもっていても、それほど違和感がない

 結果的に、ワルビルはとてもよいキャラクターになりました。「他者」でありながらタブンネよりもクリムガンに近い位置にいて、クリムガンというキャラクターを咀嚼するための中継地点になってくれました。その働きが、キャラデザインから受ける印象から乖離しすぎない点がとてもよかった。ダストダスウォーグルなどではこうはならない

 

 

 最期に明かしたことですが、今シリーズのワルビルは人間にゲットされることを夢見ています。

 初期の段階では、仲間外れにされていじめられているワルビルクリムガンが助ける、というような出会いを想定していました。ワルビルは、人間にゲットされていたワルビアルの子供で、父(または母)の語るトレーナーとの思い出に憧れ、自分もいつか人間と旅がしたいと思っている……が、その考えがメグロコワルビルの群れでは受け入れられず、爪弾き者、あるいは一匹狼のような浮いた存在になってしまっていた。そこにある日、クリムガンという旅するポケモンと出会い、人間を観察するのが趣味の一つであるクリムガンについていこうと考える……

 

 

うみねこは原作の方が好き。

 

 

 全然駄目です。クリムガンワルビルに接近する要素がひとつもない

 おそらく、クリムガンワルビルがいじめられている現場を隠れて観察するだけでしょう。しかも、このアイディアで書くにはワルビルを描写するだけで相当の文字数が必要になると思われました。主人公がワルビルになる。そんな話で、トチ狂ったクリムガンを魅力的に描けるとは到底思えない。ワルビルと出会うためだけの一話になりかねない。必要だからという理由で、そんな話を書くのがとても気に食わない。クリムガンがシナリオに踊らされる

 

 結局、ワルビルとの出会いは「Utility Unbrella」で描きました。傘という人間の道具を持っているクリムガンに、ワルビルの側から興味を持って接近してくる形です。クリムガンワルビルに関心などない。向こうが勝手に寄ってくる。いつもならそんな存在は避けたいと感じるクリムガンだが、今は考え事がしたくてそんな気分にはなれない(クリムガン気分というのを効果的に活かせるキャラだったので、その点はとても助かりました。いつものクリムガンとはイメージが違う行動をとっても、「この時はそういう気分だった」というひと言で説得力をもたせられるのですから、言ってしまえばなんでもありなキャラでした。もちろん、なにに気分をもよおさせるか、という点に、らしい・らしくない、の差はあるのでまったくの無軌道でもありませんでしたが)。最後にはお互いに名乗りあうまで関係を構築してしまい、仕方なくクリムガンワルビルをやっつける。

 その後、なぜクリムガンワルビルポケモンセンターまで連れていったのかは、私の口から語るべきではないと思います。どんなこじつけでも構わないので、このシリーズで描いたことから感じとっていただきたいです。やはりこのキャラ、なにも語るべきではないのだ。

 

 そんなところから、おそらくなんやかんやがあって、ワルビルクリムガンと旅を共にしています。ただ「人間にゲットされたい」という望みは初期案のときから変えておらず、クリムガンワルビルはそんなくらいの間柄なので、BW女主人公のトウコ(名前そのものは出さなかったけれど、御三家持ってるし、さすがに伝わっていると思いたい)と出会った際、ゲットされることを受け入れました。ここでクリムガンとの友情は壊れます。これは、いつでも必ずポケモンセンターにいるタブンネでは絶対に描けないことでした。

 

 ワルビルとの別れに、クリムガンはひどく傷つきます。そのことが後編に繋がるのですが、その傷をクリムガンがどのように認識しているか、それを書くにはやはり前後編に分割し、一旦の区切りを持たせるのが効果的だと思いました。また、ワルビルに依存する話にしたいわけでもありませんでした。ワルビルとの別れは、あくまで要素の一つであり、今作で私が書きたかったのは4Vクリムガンの完結、あくまでその前編にすぎませんでした。

 

 

 ワルビルというのは、最初からこの完結のために必要だったから登場させたキャラクターではありました。しかし書いてみれば、想定していた以上に愛おしいキャラクターになっていました。クリムガンと別れる場面を書くのは、存外辛かったものです。劇的な別れのようにはそれほど演出せず、意識してあっさりと書きましたが、クリムガンに大きな傷を与えるためのシーンだったので、苦しかったです。全20話のシリーズで、それほど頻繁に登場させたキャラクターでもありませんが、私にとってはクリムガンとほぼ同じ、10年を連れ添ったキャラクターでした。こういう形の最期を書くのは、とても辛い。

 このシリーズを書き始め、挫折して放置し、再起して完結させるまで、私はこのクリムガンを大好きになっていました。したがって、感情移入も生易しくありませんでした。

 こんな自分でもいっしょにいてくれるワルビル。そんな理解者が離れてゆくシーンは、クリムガンと同じように自分まで傷ついて感じてしまい、本当に心が苦しかったのです。

 こういうのも親馬鹿というのでしょうか。

 

 

 しかし、まだ完結のための前編です。今作は、ずっと放ったらかしにしていた連載の始末書のような側面もありました。私はどうしても、4Vクリムガンの「終わり」を書きたかったのです。

 いつ終わってもいいシリーズではありました。このクリムガンで書けそうなネタもまだまだありました。しかしこの10年のうちに、このシリーズがどのように終わるかは、もうそれなりに具体的なアイディアができていました。それを書きたいと思った時、このシリーズは終わるべきでした。私はアイディアが浮かんだ時点で、書かずにいられません

 本当に、最期の最期まで独善だけで書いていたシリーズです。

 

 

 

 

浮舟

www.pixiv.net

 

 これをpixivに投稿したのは12月ですが、実際には8月に執筆していました。某ポケモン二次創作サイトの企画に参加するために書いたものです。

 

 pixivのキャプションにも書きましたが、この企画は「らい」というテーマで2万字以内の短編小説を書くものでした。テーマが発表され、ひとまず「らい」読める感じでなにか日本語的な意味があるのか検索したところ、「来」の文字でピンとくるものがありました。ざっくり言うと、「過去のある時点から今まで」というものです。◯◯以来、というような意味と理解してよさそうでした。

 その意味からの連想で、だれかが再会を願う物語を書こうと思いました。それも、ただ会いたいのではなく、なんらかの強い思いが今もずっと続いている、という話がいい。

 

 激しい激情を身に宿す……そんなイメージにマッチするポケモンを探して(経緯がワルビルの時と同じだな)、当時最新作であった「ポケットモンスター ソード・シールド」に登場するポケモンGoogleで検索し、ガラル図鑑を眺めました。すると、この上ないと思われるポケモンが図鑑ナンバー順で比較的、上の方にいたのです。ギャラドスでした

 

 ギャラドスは非常に凶暴な性質であることが、どの世代のポケモン図鑑でも強調されています。怒りや憎しみのような形で、だれかとの再会……というか再戦を望み続けるのはとても想像しやすかった。ならば、縄張りでブイブイいわせていた野生のギャラドスが、ある日こてんぱんに負けてしまう話がいい。つまり、タイプ相性でギャラドスを倒しやすいでんきタイプ……もしくはフリーズドライをレベルで習得するこおりタイプがいいだろう。

 しかし、もとより不利なでんきタイプに挑みかかって返り討ちにあうのでは、ギャラドスがただの馬鹿になってしまいます。それよりは、一見弱そうでしめしめと近づいたところを、「フリーズドライ」で思わぬ形の弱点を突かれ、わけもわからずに負けてしまうほうが、よほど悔しく、再戦に駆られそうだと思いました。では、ガラル地方にはどんなこおりタイプがいただろうか……できれば第8世代で新登場のポケモンがいいんだけど……

 

 コオリッポ

 

 

悩ましげなナイスフェイスというのもよかった。

 

 

 これは、なかなかいいじゃないだろうか?

 見た目だけでは、それほど強力そうには見えないポケモンです。いかにも強大なギャラドスが、あっさり倒せそうだと見えてもおかしくない。それに、ギャラドスというのはもっぱら物理方面の攻撃手段が強力なポケモンです。コオリッポの「アイスフェイス」がとても有効にはたらくポケモンでした。まあ特殊型ギャラドスなどという変態型がまったくいないわけではないですが、そこは野生のギャラドスということで、妙にバトルの詳細な知識があるのも不自然です。自分の長所を活かしたバトルをするのが道理でしょう。

 

 

 コオリッポは、天候が雪の間だけ、ワイルドエリアに出現するポケモンでした。したがって、投稿時期はおもいっきり夏でしたが、冬の話にしました。冬は、再会を強く望むという話を書くうえで、物悲しさを演出しやすい季節でちょうどいい。

 次に、ギャラドスがそれほど再会したいと願う動機が必要でした。これは簡単です。コオリッポに負け続ければよいのです。どれだけ挑んでも「アイスフェイス」で攻撃を防がれ、「フリーズドライ」の一撃でやられてしまう。次こそは、次こそは……と思っているうちにコオリッポが消えてしまえば、もう話が成立します。しかしそこで、コオリッポがギャラドスの縄張りに何度も足を運ぶ動機もまた必要でした。

 

 ここで私の手癖の発動です。やはりポケモンで二次創作をするうえで「人間」を蔑ろにしていては、独りよがりです。コオリッポに人間との絆を持たせよう。そのうえで、コオリッポの哲学とギャラドスの哲学を衝突させれば、勝敗とは別の因縁が発生します。そうしているうちに、ギャラドスとコオリッポにはいつの間にか絆らしき繋がりができます。そしてそれがある日、前触れなく終わる。その終わりをギャラドスは納得できない。終わってなどいない、きっとまだ次がある、次こそはあいつに勝てるはず、という思いがいつまでも捨てられない。しかしコオリッポはもうどこにもいない。置き去りにギャラドスは再びコオリッポがやってくるのを待ち続ける――

 

 というのが、私が思い描いた「らい」でした。

 私としては、くどいほどに「来」の字を本文で繰り返したのですが、これが「フリーズドライ」と誤認されたり、そもそも「らい」のテーマに沿っていないと感じられたりして、さほどよい評価には至りませんでした。なにより痛かったのが、「作品投稿後は追記・修正は禁止」という企画のルールを失念し、投稿後に誤字脱字を修正してしまったために、大幅な減点になってしまったのでした。

 読者が作者以上の作品理解に至ることなど、原理的にあり得ません。私はその点を侮っていました。もっともっと露骨に、この話を「らい」のテーマで書いていると演出するべきだったのです。「らい」という語感から連想した「来」の文字に含まれる辞書的な意味など、読者が想定できるはずがありませんでした。小説には、書きたいことを直接書いてしまうと無粋になるという暗黙のルールがありますが、私はその意識を捨てきれないために、「わかりやすさ」を意図的に捨てている部分があります。いくらかわかりづらくとも、小説という形式で創作したり、小説が好きで創作を見たりする人なら、これくらいは伝わるだろうと思っていました。文章表現や、ギャラドスとコオリッポの触れ合いなどを気に入ってもらえた部分はあれば、肝心の「らい」については微塵も伝わらなかったわけです。

 

「こんな程度のことも読めないのか」と開き直ることは簡単です。しかし、私は多くの人に読んでもらうことをそれなりに目指していますし、小説を読み慣れていない人でも理解しやすいように書くことは必要だと考えています。プロの世界でも同じですが、「上手い小説は読まれない」というのは事実です。小説なんて、読む人間のほとんどは素人ですから、素人に理解できないような、テクニックを求められる小説など、見向きされないのは当然なのです。今作が、非常に上手に書けた高度な小説だとは決して思っていませんが、それでも少なくとも「企画に出すために、いつも以上に上手く見えるものを書こう」と思いながら書いていました。それが思いきり裏目に出た格好になりました。

 

 とはいえ、私としてはなかなかよいものを書けたと思っています。前述した規約違反も相まって、「らい」のテーマを踏まえるとそれほどの評価にはならなかったものの、内容だけを見たときに気に入ってくれた方は大勢いたのです。純粋に文章を褒めてくれた方もいましたし、ギャラドスにコオリッポという、一見ちぐはぐな組み合わせも気に入っています。三人称で端的に文章を書きながら、同時にギャラドスの感じている激情を表現しかったという点も、きちんと伝わり高評価を頂けました。

 小説などエンタメですから、面白いものが書けていればそれでよいのです。しかし単に面白ければよいというのではなく、評価されやすいように演出することや、需要・トレンドに合わせたものを書くということも、私は意識せねばなりません。そのことを4Vクリムガンの一件で思い知ったつもりでいても、まだまだ精進が足りていませんでした。そういう意味で、とてもよい経験になったのが今作でした。

 

 

 そういえば、不老不死のSFや、バレンタインのヒスイジュナイパーなど、すべてを語りきらずぶつ切りな話を書くようになったような気がします。エンタメ的にはわかりやすいオチがあった方がよいと思いますが、世の中の小説にはそんなオチなどないものもたくさんありますし、そういうふうに話を書きたいときもあります。2021年は毎週小説をpixivに投稿していたこともあり、それなりにコンパクトな文字数ですっきりと終わるようなものもけっこう書いていましたし、反動かもしれません。

 

 

 

 

Guardian of Materialism

www.jmof.jp

 

 次はケモノストーリーコンテスト2023に応募するために書いたものです。

 この企画は掌編部門と短編部門がありまして、私は短編部門で応募しました。原稿用紙換算で50枚程度の文字数、というのが上限だったので、まあ2万字くらいは書けるつもりでいたわけです。

 ところが。

 

 実際に書き上げたものは原稿用紙換算で90枚超

 なにか小説書きのあいだでは文字数が多いことイコール至上という意識があるようですが、増やせばいいってもんじゃない。こと規約が設けられている場合などは、規定の文字数にきちんと納めること、短編なら短編の範囲で話を組み立てること、それはもはやできて当然です。そしてなにより面白い小説であること。文字数など、多かろうが少なかろうがどうでもよろしい。こんなにたくさんの文字を書いたボク・ワタシの努力の量など、作品の質を一切左右しない。小説の評価はただただ究極に面白いかどうかで決めるべきなのです。

 私はこの小説、まずまず面白いと思うのです。絶対にこのネタで応募したかった。しかしそれには内容を半分近く削らねばなりませんでした。半分て……

 

 半分なくなったら、もはや原型を留めることすら困難です。オミットしても展開を左右しないエピソードを削り、言い回しを変え、なんとか50枚程度の文字数に納めましたが……それができるってことはつまり、私の小説は削れる余地ありまくりの無駄が多いってことかしら……と、いったん書きあがったものをひたすらスケールダウンさせてゆく虚しい作業となりました。だいたいこれくらいの文字数で書けるだろう、という見積もりがあまりにも杜撰だとこういうことも起こります。

 この話に込めたかったものが、大幅に削れてしまいました。もはやこれは違う話です。このままではあんまりですので、JMOF2023が終わったらpixivに完全版をアップしようと思います。

 

 

「浮舟」での反省を踏まえ、そしてケモノストーリーコンテスト2022では尖らせた割にそれほど深くまで刺さらなかった感触もあり、今作ではわかりやすさを強く心がけました。もちろん、こちらから易しく噛み砕いてあげるばかりでなく、読者が自分で咀嚼してほしい部分もたくさんありましたので、余地として残してある部分はたくさんあります。それは「読み」の楽しさです。いくらわかりやすくするためといって、そういうものを損なってはいけません。重要な設定をいちいちセリフで説明するなどの陳腐に堕するわけにはいきません。

 

 そのようなわけで、今年のテーマである「back to」もストレートに扱って、どこかへ戻ってゆく話を書きました。あとは、最後の最後で冒頭に繋がるというのも、ギミックといえばそうかもしれませんが、別に高度なことをやってるわけでもなく、よくある書き方です。

 

 やはりこういうテーマなので、応募作品の中にはSF的なテイストのものもありました。SFがずるいのは、「SFを書ける」という時点でとてつもなく上手に見えがちなところです。もちろんSFは専門知識があればあるほど凝った話にもできます。自身の学びを活かして練りに練った小説を書けるなら、それは間違いなくその人のスキルです。ただ、SFであれば面白い、というわけではありませんから、やはり小説が小説であるための要素をとりこぼしてはいけません。

 私も当初はタイムリープなんぞを書こうかと思いはしたものの、書きたいものを優先してしまいました。ケモノストーリーコンテストは「コンテスト」ですので、賞をとるための賞取り小説を書いたほうがよかったかなとも少しは思います。受賞しやすそうな、評価されやすそうなものを書くというのも決して悪いことではありません。

 ただ今回のストーリーコンテストは、なんだか完成させられただけで感無量という感じでして、大賞を狙うまでの気概を持てませんでした。あまり凝ったものを書かずに、書きたいもので応募してみようという気持ちが強かったです。それでも、言い訳じみていますが、楽しく書けたので満足しています。カットせざるを得なかった部分も多大でしたが、活き活きとした動物たちを書いているときは本当に楽しかったのです。

 そして切ない話を書くというのは、やはり苦しいものです。書いている最中はこの上なく登場人物に感情移入しておりますので、彼らの感じる苦しみを、同時に私も感じています。なので重い話を書きがちな私は、自分で自分のメンタルにダイレクトアタックしているようなものでして、非常にしんどい。

 そういう思いをしながら書いたものですから、一人でも多くの人に同じ切なさを感じてもらいたいです。できれば彼らを愛してもらいたいです。そうしてもしよい評価までいただけたなら、それにすぐる歓びはありません。

 

 

 今作『Guardian of Materialism』は、JMOF公式サイトで掲載中です。読者投票などはありませんので、もし興味があれば気軽にご一読ください。

 

 

 

 

 さて、今日の記事では3作を振り返りましたが、なぜか順番がすっ飛んでしまったので、次回は肩身が狭いルカリオと夏のガブジュナを振り返ります。なんでこんなことになったんだと気づいたときにはけっこうな文字数を書いてしまっていたので、そのまま最後までやってしまいました。次はもう少しライトに語れそうだ。