ルカリオとヒスイジュナイパーでバレンタインデー

 

 

終盤、ギンガ団本部1階に突然現れたルカリオ。なんかいてかわいい。

 

 

 ルカリオというポケモンに対して、私は常日頃から「かわいい、かわいい」と愛を吐いたりしません。ルカリオがかわいいのは当然のことなので、今さらいちいち言うまでもないことです。

 わたしがポケモンをプレイするとき、そこにルカリオがいるのは自然の摂理です。ルカリオ、もしくはリオルをゲットするまではすべてチュートリアルルカリオがともにあってこそ、私は初めて新たな冒険に一歩を踏み出すことができます。

 ポケモンLEGENDSアルセウスでは、チュートリアルが非常に長かった。物語の展開としてはすでに終盤に差し掛かったころ、純白の凍土を訪れたプレイヤーはようやくルカリオと出会えるのです。野生の

 

 各世代でのルカリオの入手方法というのは少し特別なものばかりでした。

ダイヤモンド・パール」ではNPCからリオルのタマゴを受け取って進化させるしかなく、「ハートゴールドソウルシルバー」でもサファリゾーンに出現するリオルを進化させるしかありません。「ブラック・ホワイト」では、ゆめしまでリオルを入手可能で、「ブラック2・ホワイト2」では序盤の草むらでリオルが出現。「X・Y」ではストーリーでルカリオを確定で入手するほか、草むらではリオルが出現します。「サン・ムーン」ならびに「ウルトラサン・ウルトラムーン」ではリオルの仲間呼びでのみルカリオが出現、などなど……多くの過去作でルカリオと直接遭遇することはできず、ルカリオの入手方法とはすなわちリオルの入手方法であったのです。

 

「ソード・シールド」のワイルドエリアでルカリオが普通に歩いているのを見て、私は仰天しました。野生のルカリオやんけ!!

 シリーズ初のシンボルエンカウントであり、野生のポケモンがそこらへんを歩いている様子が見られるようになった新仕様も相まって、それはもう驚いたのです。ルカリオが普通にいる。しかもワイルドエリアを歩いている姿さえ観察できる。こんなものは驚天動地でしょう。「サン・ムーン」まではそもそも「野生のルカリオ」というもの自体が存在しなかったのです(「サン・ムーン」でさえリオルの仲間呼びでようやく出会える)。それが、ただルカリオと直接エンカウントできるだけでなく、そこにいる姿まで見られるなんて……

 

 ですので、「ソード・シールド」を経た「LEGENDSアルセウス」でも、ようやっとの思いで野生のルカリオを発見したとき、「野生のルカリオ」という存在の珍しさはまだまだ新鮮でした。ルカリオが、立って、歩いて、動いて、そこにいる。いるだけでかわいい。それがルカリオ

 ワイルドエリアの砂地にいたのもはがねタイプらしくてよかったですが、雪の世界のルカリオというのもなかなか絵になります。「サン・ムーン」では森の中での出現でしたし、ルカリオの生息可能な環境というのは幅広いようですね。どんなロケーションにも不思議と馴染むポケモンです。

 

 それにしても、ルカリオのかわいらしさのひとつには、あの体格があります。大きすぎず、小さすぎず、なんともちょうどのサイズ感をしています。個体差の大小はありますが、おおむねポケモンの主人公である少年少女よりも一回り小柄です。強くてかっこいいけれど体は比較的ちいさめというのが、我々がよく知る、従来のルカリオでした。

 ですが――ポケモンというIPで唯一無二のゲームデザインである「LEGENDSアルセウス」、まだまだ私を驚かせてくれます。

 

 オヤブンルカリオの存在

 

 

 

 

ルカリオとヒスイジュナイパーでバレンタインデー

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 当然、オヤブン個体のポケモン自体は、それまでLEGENDSアルセウスをプレイしてきた中でも何度も見ています。野生のルカリオが出現した以上、オヤブンルカリオがいたとしてもなんの不思議もありません。「もしかしたらルカリオにもオヤブンがいるのかなあ」なんて気楽に考えて純白の凍土を歩き回り、発売前から公開されていたヒスイゾロアを発見してキャーキャーいっているうちに、本当にオヤブンルカリオに出会ってしまったときの、衝撃たるや。

 ルカリオが、デカい。デカかわいい!

 そもそも「野生のルカリオ」というものさえ未だに珍しがっているような私が、はなはだ大きいルカリオと出会ってしまったのです。しかもめちゃくちゃ敵意を向けてくる。あれこれと動き回って私を攻撃してくる。こんなの初めて!  っていうか、初めてすぎる!

 

 探索を続けると、西に向かって山を越えた向こう側ではオヤブンガブリアスとも出会えましたし、そこから北には「雪見の出で湯」なる天然の温泉まであります。私がはじめて温泉を訪れたときは、ゴーリキーベロリンガなどにまじって、たまたまルカリオも温泉に浸かりにきていました。かわいい。

 ヒスイ地方のルカリオはこんなふうに生きているんだなあと思うと、純白の凍土というフィールドがいっぺんで愛おしくなり、これでなにか書くことはもはや確定事項でした。「書きたいな」や「書かねばならない」という気持ちですらなく、それはいずれ私の手によって「書かれる」のである。

 

 さて。

 ストーリーもクリアして、LEGENDSアルセウスをそれなりに楽しんだところで、ぼちぼちバレンタインの時期でした。

 私は「劇場版ポケットモンスター ミュウと波導の勇者ルカリオ」からの古のルカリオ推しですので、チョコレートといえばルカリオですし、バレンタインにルカリオを書くことは物事の当然の流れです。そしてやはり、ネタとして旬なうちにヒスイ地方も使いたい。今年のバレンタインはレジェアルでいくぞ! プロットを練るのだ!

 

 とはいえ、課題はいくつかありました。

 まず、ヒスイ地方の文明度です。SF的超科学が当然のように存在する従来のポケモンとは違い、「LEGENDSアルセウス」の世界は現実の日本でいえば、大正時代がせいぜい、といった風情です。バレンタインデーどころか、チョコレートのような大量の砂糖を使うお菓子も存在するかどうか疑わしい。

 では、レジェアルでバレンタインデーを書こうとすると、現代人である主人公がバレンタインの概念を輸入するのは決定です。それ以外にない。チョコレートを用意するのはさすがに厳しそうですが、幸い「コトブキマフィン」というおやつじみた食べ物はゲーム中に存在したので、お菓子はこれで代用。ルカリオにチョコレートという組み合わせは書けなくなるが、まあよし。

 話としては、主人公がバレンタインに知り合いや手持ちたちへお菓子を配り、それを見た手持ちのポケモンが真似して、親しい野生のポケモンにコトブキマフィンをプレゼントする――くらいの流れでいけそうでした。となれば、旅の最初から主人公と共にいる御三家を使うのがちょうどいい。ヒスイジュナイパーというジュナイパーのリージョンフォームでもなにか書ければと思っていたところです。なんとなれば、ジュナイパーというのもそこそこ体が大きいポケモンなので、オヤブンルカリオエッチの相手としてもなんとかなりそうです。ルカリオジュナイパー。組み合わせ的にも非常によろしい。

 

 そこで新たな課題です。オヤブンルカリオを主人公がゲットしてしまっては、順当にいって、主人公がルカリオに直接マフィンを食べさせてしまうでしょう。それではバレンタインのロマンスを書きにくい。それでもなんだかんだやりようはありそうでしたが、私の気分として、そんなことに文字数を費やしたくはない。やはりここは、ジュナイパールカリオにマフィンをプレゼントする話を書きたい。

 そもそも、LEGENDSアルセウスは「ポケモンの恐ろしさ」を扱ったゲームでもあります。我々プレイヤーも、ポケモンバトルではなく、人間を直接攻撃してくるオヤブンや、キング・クイーンの強大さをどんなにか感じてきています。ゲームやアニメで親しんできたのとは違うポケモンたちの姿がそこにあり、レジェアルで二次創作をするなら野生たちの生き様を書かないのはあまりにもったいないことです。

 オヤブンルカリオは、野生のままでいくことにしました。

 

 

「デカいルカリオ」という未知の存在。

 

 

 人間にゲットされているポケモンと、野生のポケモンの接点が必要でした。

 これはもう、真っ先に思いつきました。使うしかありません。温泉です。

 

 雪見の出で湯自体にはイベントシーンなどもなく、ただ温泉が湧いているだけの場所でしかないのですが、この温泉では野生のポケモンは主人公を襲ってこないのです。

 素晴らしい仕様です。ゲーム的になにか意味があるのかといえば、なんの意味もないのですが、無意味だとしてもわざわざそのように設計されているのですから意図はあるのです。「ここでは争うな」とだれかが監視しているわけでもなく、野生のポケモンたちの自由意志で温泉の平和が保たれている。こういうの、なんともぐっとくるじゃないですか。

 この温泉であれば、主人公のジュナイパーとオヤブンルカリオのあいだに交流が生まれたとしても、それほど不自然にはなりません。接点はじゅうぶんです。あとは二匹をラブラブにさせるだけでいい。

 これにて課題はほぼほぼクリアになりました。

 ただし、人間の元で生きているジュナイパーを、オヤブンがやすやすと受け入れてしまっては話が安直です。いけすかないと感じているジュナイパーを、オヤブンルカリオがなぜ、いかにして愛するに至るかが肝になりました。

 ですが問題ありません。私、そういうのは大得意ですよ!

 

 

 そのような経緯でしたので、今作の筋書きは機械的にというか、半ば設定の方が勝手にできあがってくれたのでした。この時点でバレンタインデーはついでのような扱いになってしまいましたが、創作としては、それなりにヒスイ地方らしくなったように思います。

 

 私は常々、「ポケモンのスペックを考えれば人間ごときいつでも破滅させられる」ということを主張しておりました。いったいだれになにを主張しているんだ? なまじ原作ゲームやアニメでポケモンという生き物たちを身近に感じているから忘れられがちなのですが、彼らは人間のよき隣人とか友とかである前に、恐るべき力を単体で自由に振るうことのできるモンスターなのです。そのことがどうにもおざなりにされているようで、私はずっと悶々としてきていたのです。

 そこへ、LEGENDSアルセウスポケモンの恐ろしさを描いてくれました。なんという解釈一致か!

 そうであるならば、私もポケモンの生存競争の激しさを書かせてもらおうと思いました。決して生易しくない世界で、死と隣合わせのように生きているルカリオと、命の心配とは無縁の世界に生きているジュナイパーを、心置きなく描けたのです。世間知らずの箱入りポケモン、とルカリオジュナイパーを見下し、それをねじ伏せてやることに優越を覚える……そんなキャラ付けも、レジェアルにおいては単なる私の独りよがりではなくなった気がして、楽しかった。

 

 また、LEGENDSアルセウスの特色はそれだけではありませんでした。主人公が異世界人であることです。

 トレーナーが野生のポケモンをゲットしたために、家族や群れの仲間が置き去りになる――ということを描いた創作を、みなさんも一度は目にしたことがあると思います。今作ではそのエッセンスを強化しました。

 ひどい話で、原作では主人公がポケモン図鑑を完成させてアルセウスに出会っても、元の世界には帰れません。というか、アルセウスがいったいなんのために主人公をヒスイ地方へ連れてきたのか、最後まで説明されません。神の立場を使ってウォロの企みを阻止したかったのならば、「すべての ポケモンに であえ」という指示にはなりません。ただ出会ったところでポケモンバトルが絶望的に下手くそだったらどうするんだよしたがって、ヒスイ地方で巻き起こる様々な出来事と、アルセウスの指令は、なんの関係もありません

 話として明らかにおかしいです。納得がいかない。帰れないことが問題ではありません。帰れないなら帰れないでもかまわないから、納得できる理由をよこせ。アルセウスがなにをしたかったのか、ひとつも理解できないまま終わるのはおかしい。

 なので、今作ではそこを主人公が元の世界へ戻るエンディングがあるものとして扱いました。普通そうじゃない?

 もちろん、そのほうがルカリオジュナイパーのロマンスに演出が利いて効果的という狙いもありましたが、主人公だって自分の家に帰れるかもしれないと思ってヒスイ地方で頑張ってきたはずなのです。異世界での旅を描くなら、異世界との別れがあってもよさそうなものです。その部分を、私はルカリオの視点から勝手に補完しました

 

 結局、バレンタインは私の「こうだったらいいな」の口実になってしまいました。まあ、まるっきり無意味というわけではなく、主人公が異世界人であることの証明を強化する要素にはなりましたか。書きたい要素を増やした結果、バレンタイン物としてはいささか薄い感じがします。昨年はルカリオガオガエンをバレンタインでラブラブにさせるためだけに7万字弱もの文字数を費やしていたことを思えば、スケールダウンは否めないところです。

 ただ、オヤブンルカリオの物語としてはそれなりの読みごたえにできたように思います。悲恋もたまにはいい。文字数の上では半分程度でも、別れなければない故の狂おしい愛情は表現できました。私的にはいろいろな面で満足です。脇役でガブリアスも出せたし。

 

 

 

 

でっっっっ!!

 

 

 思えば、週一投稿に挑戦して、短い時間でなにかしらを書いていたときは、いったいなにを書けばいいのかとずっと迷いながら書いていたものです。なんとか書きあがっても、反省しなければならなかったことも多々ありました。

 しかしこの2022年は、話の完成度は置いておいて、話が書きあがったときにはおおむね自分で納得できていたように思います。一週間という締め切りがなくなり、ある程度好きなように時間をかけられているからかもしれませんし、ひょっとすると話をまとめあげる腕がちょっとは上がったということかもしれません。そうだったらいいですね。そうであってくれと願うばかりです。

 

 だがしかし、私は未だクリスマスネタで書かねばならない小説を一文字も執筆できていないのです。どうしてくれんのこれ?

 とりあえず、この三日間は作品振り返りに時間を使いましたが、明日からはしばらく、せめて12月25日までは空き時間を執筆にあてたいと思います。残りの振り返りはそのあとに。

 

(正月ネタも書かないといけないのに、時間足りるのか?)